市立高校陸上部所属の原告が顧問教諭の指導による練習で転倒し負傷した事案

2018.10.20 スポーツ中の事故

京都地方裁判所平成28年10月27日判決

事案の概要

本件は、京都市立の高等学校陸上部に所属していた原告が、顧問であるA教諭の指導により、背中と両腕の間に長さ約1.2mの棒を挟んだ状態で、約1.7m間隔で置かれた、高さ約20㎝、幅約55㎝、脚の奥行約20㎝の鉄製のミニハードル10台を跳び越えながら40mを走る練習をしていたところ、ミニハードルに足をとられて転倒し、左顔面挫創等の傷害を負ったとして、A教諭の職務上の注意義務違反を主張し、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた事案です。

裁判所の判断

裁判所は、A教諭の職務上の注意義務について

「学校の教師は、学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負っており、危険を伴う技術を指導する場合には、事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務がある(最高裁昭和62年2月6日第二小法廷判決・裁判集民事150号75頁参照)。」

とした上で、

「本件ミニハードル練習は、両腕を棒で背中側に固定された状態で、障害物を跳び越えながら、一定の速度で走るものであるから、通常よりバランスがとりにくく、また、視線を下に向けにくくなり、したがって、転倒の危険が大きくなるとともに、転倒時に手を地面につく等の危険回避行動が取れず、頭部・顔面を立位から直接地面に衝突させる等の危険が内在していると認められる。

上記危険は、高等学校における部活動で許容される範囲内のものではなく、部活動を指導・監督する教師は、過去の転倒事例の有無にかかわらず、上記危険を容易に認識し得たというべきである。」

と判示しました。

また、裁判所は、

「本件ミニハードル練習は、他の高等学校で既に実施されているものをA教諭が導入したこと、その後2年以上にわたり本件陸上部で200回以上実施されていたことが認められるが、このことも、この判断を左右しない。」

とし、

「A教諭は、本件陸上部の顧問として指導に当たっていたのであるから、練習における事故の危険をできる限り小さくすべく練習の内容等を指示すべき職務上の義務を負っており、このような練習を実施するよう指導したことは、同教諭の同義務違反に当たる。」

と判断しました。

「普段やっていること」だからこそ注意を

本件の事故が発生した練習内容については、普段から行っていたものであったと考えられます。

しかし、選手が普段どおりの練習をしていてけがをした場合であっても、顧問教員の事故発生防止義務が認められました。

選手も顧問教員も普段から行っている練習であり、事故が発生したこともなかったことから、その危険性を考えたこともなかったことでしょう。

それは、慣れによる慢心が原因であったといえるのではないでしょうか。

普段から行っていることであるからこそ、その練習内容に危険性がないといえるのかどうか、危険性があると考えられる場合にどのような事故発生防止措置をとるべきであるのかを考えて実行すべきであるといえるでしょう。

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