大会当日に足の痛みがあるのに顧問教諭に促されて競技に出場したため症状が悪化した事例

2018.10.21 スポーツ中の事故

京都地方裁判所平成28年10月27日判決

事案の概要

本件は、京都市立高校陸上部に所属していた原告が、陸上競技大会当日、大会会場で準備運動等を行った後に右足の痛みが強くなったため、本件陸上部顧問として本件大会に参加しアナウンス係を担当していたA教諭に対し、右足が痛いので競技への出場を辞退したい旨申し出たのに対し、A教諭が原告に対して

  • 「練習してないのに痛くなるのはおかしい。」
  • 「痛みは走っている最中は分からない。」
  • 「1分くらい我慢して走ってみ。」

などと述べて出場を促したことから、原告が当初の予定どおりに出場したところ、足の痛みが悪化して会場で歩けなくなり、右陳旧性足関節外側靱帯損傷の診断を受けたとして、A教諭の職務上の注意義務違反を主張し、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた事案です。

裁判所の判断

裁判所は、A教諭の職務上の注意義務について

「本件大会競技への出場は、本件陸上部の活動としてのものであって、学校の教育活動の一環であったと認められ,A教諭は、本件陸上部の部活動に当たり、これにより生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負っていたから、部員の身体に何らかの異常があることを認知した場合には、その状態を確認し、必要に応じて、運動の中止、応急措置、医療機関での受診指示等の措置を執り、競技への出場によって生じ得る危険の回避に努めるべき義務があった。」

とした上で、

「A教諭は、本件大会の会場において、原告から、足ないし足首が痛いので競技への出場を辞退したい旨の申出を受けたのであるから、原告から具体的な痛みの内容・程度や経過等を聴取するとともに、直接足の状態を確認し、必要がないと認められる場合を除き、医師の診察を受ける等の指示をし、安全であると判断できる合理的な根拠がないまま競技に出場させることのないようにすべき義務を負っていたと解される。

しかし、A教諭は、原告が痛いという箇所を見て触る等しただけで、医学的根拠もなしに、原告が、実際にはそれほど痛みがないのに、精神的重圧から出場辞退を申し出たものと判断し、『練習してないのに痛くなるのはおかしい。』、『痛みは走っている最中は分からない。』、『1分くらい我慢して走ってみ。』などと述べて出場を促したというべきであり、さらにいえば、部の顧問と高校生の部員という関係からすれば、これは、原告の意思に反して出場させたとも評価することができる。」

として、

「A教諭は、教師としての上記義務に違反したというべきである。」

と判断しました。

けがの悪化を防止するべき義務

本件では、顧問教員に対し、けがが悪化しないように配慮するべき義務があることが認められました。

多くの部員や選手は、大会に出場し、結果を出したいと考え、日々の練習に励んでいるのだと思われます。

そのことを考えると、大会目前や当日になってけがをしたとしても、何とかして出場したいと考えるのが一般的なのではないでしょうか。

しかし、身体に異常がある場合に無理をしてしまうと、けがが悪化してしまうことは想像がつくはずです。

顧問教員や監督・コーチは、たとえ部員や選手がけがをしているにもかかわらず試合に出たいと訴えてきたとしても、出場を制止するべきだといえるでしょう。

ところが、本件では、部員が自ら出場辞退を申し出ています。

おそらく相当な葛藤のうえでの決断だったことでしょう。

しかし、顧問教員は逆に出場するように促し、結果的にけがを悪化させることになりました。

部員や選手を優先して考えるならば、この判断は明らかに誤りだといえます。

スポーツは選手ファーストで考えるべきだということの好例だといえると思います。

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