キャッチボールをしていた小学生の投球が付近で遊んでいた他の小学生に当たり心臓振盪で死亡した事例

2018.10.02 スポーツ中の事故

仙台地方裁判所平成17年2月17日判決

事案の概要

 

平成14年4月15日午後4時前ころ、宮城県の公園内で、乙(当時9歳10ヶ月)と丙(当時9歳8ヶ月)がキャッチボールをしていた際、キャッチャーをしていた丙の右後方約1.5メートルの地点に甲が立っていたところ、乙が投げたボールが甲の方向にそれ、乙の投げたボールが甲の胸腹部に当たり、その直後に、甲がうずくまるようにしてその場に倒れ込みました。

甲は救急車で病院に搬送されましたが、同日午後7時45分ころ死亡しました。

甲は、本件事故当日まで、普通の健康な小学生で、学校の健康診断でも特段の問題が指摘されることはありませんでした。

また、日常生活において失神発作を起こすとか、動悸を訴えることはなく、死亡につながりうる程度の危険性の高い不整脈の症状や既往歴はありませんでした。

本件事故当日も、甲が特に健康状態を悪化させていた事情はなく、乙の投球の打撃を受けるまでは、いつものように友人らと元気に遊んでいました。

甲は、乙の投球を胸腹部に受けた直後、全身虚脱の状態となり、救急隊が到着した時点では既に心肺停止の状態となっていました。

甲の死体解剖を行った医師を含め、複数の医師が甲の死因を心臓振盪によるものであるとしました。

裁判所の判断

裁判所は、

「乙らは、本件事故当時の公園の状況でキャッチボールをすれば、ボールがそれて甲ら他人にあたることが十分に予見でき、軟式野球ボール(C球)が他人に当たった場合に、その打撃部位によっては他人に傷害を与え、さらには死亡するに至らせることがあることも予見しえたというべきであるから、乙らは、かかる危険な状況でのキャッチボールを避けるべき注意義務があったのに、漫然とこれを行った過失があるといわざるをえない。」

「被告ら(※乙・丙の両親ら)は、心臓振盪による死亡を予見することは不可能であった旨主張するが、心臓振盪等の具体的死亡経過について予見できなかったとしても、ボールがそれて他人に当たること、それによって死亡することもあることの予見可能性があった以上は、死亡の結果に対する責任も免れないというべきである。」

「また、被告らは、小学4年生が投げた軟式野球ボール(C球)が約20メートルも離れた人に当たった場合に死亡すること自体予見不可能であった旨主張するが、小学4年生といえども、ピッチング練習として力を込めて投げたボールが無防備の人の頭部や心臓部等の枢要部に当たった場合に、その人が死亡することもありうることは、一般人にとっても十分に予見でき、その予見可能性がなかったとはいえない。」

「被告らは、キャッチボールのボールが当たって他人を死亡させる結果が生じることは予見しえないから、親として子にこれを指導監督する義務はないとも主張するが、これが採用しえないことは前記のとおりである。」

と判示して、乙・丙の両親の監督者責任(民法712条、714条1項)を認めました。

加害者が子供でも、その親に損害賠償責任が認められることがある。

民法712条は、

「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」

と規定しています。

この「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」のことを責任能力といい、加害者に責任能力がないと認められる場合には、加害者は損害賠償責任を負わないこととなります。

この責任能力については概ね11~12歳程度が目安だとされています。

つまり、加害者が11~12歳未満の子供の場合には、被害者が加害者に対して損害賠償を請求したとしても認められないことになります。

しかし、それでは被害者の保護に欠けることになってしまいます。

そこで、民法714条1項は

「前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」

と規定して、加害者である子供が責任無能力者であるために損害賠償責任を負わないという場合でも、その監督義務者である親が損害賠償責任を負うことになります。

もっとも、民法714条1項には

「ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」

という規定があります。

したがって、親が子供に対しての監督義務を怠っていないか、もしくは監督義務を怠らなくても被害者に損害が発生したといえる場合には、損害賠償責任を免れることになります。

本件の裁判では、乙・丙はいずれも9~10歳程度でしたので、責任能力がないために損害賠償責任を負わないということになります。

しかし、乙・丙の両親には、それぞれ乙・丙を監督するべき義務があり、その義務を怠ったとして、損害賠償を命じられました。

「子供がすることだから」などと安易に考えることなく、しっかりと監督義務を果たすべきだということを再認識していただければと思います。

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