ミニバスケットボール大会の試合中に壁下部の窓枠に激突して骨折し後遺障害が残った事案

2018.10.11 スポーツ中の事故

京都地方裁判所平成25年8月28日判決

事案の概要

本件は、原告が、平成21年5月17日に、被告京都市が設置・管理する京都市こども体育館にて、被告協会主催の「ミニバスケットボールスポーツ少年団春季大会」に参加した際、試合中に、壁下部の窓枠に激突し、右脛腓骨骨幹部開放骨折等の傷害を負い、後遺障害が残ったなどと主張して、本件体育館を設置・管理する被告京都市に対して国家賠償法2条1項に基づく損害賠償、主催者である被告協会に対して不法行為ないし使用者責任に基づく損害賠償を求めた事例です。

裁判所の判断

被告京都市の責任

裁判所は、被告京都市について

「本件体育館は、『公の営造物』であるところ、被告京都市は、営造物の設置者として、本件体育館のゴールないしその配置について、体育館の通常の使用方法により、利用者が負傷しないように事故防止の措置を講じるなどして、通常有すべき安全性を備えさせなければならない。」

ということを前提に、

「本件体育館をバスケットボールで使用する際には、本件体育館のキャットウォーク側に固定してあるゴールは、壁からわずか90㎝程度の距離しかなく、レイアップシュートをする際などに選手が勢いよく走り込んだ場合には、制止できず、壁ないし壁に設置されている床窓の枠に衝突する危険性があることが認められる。

そして、壁に身体が当たりそうになった場合には、通常は、手で壁を押すなどして勢いを弱めるなどすれば、形状が平面であって素材も木製であるため、傷害を負う危険性が高いとはいえず、特段の安全措置を講じなくとも、通常有すべき安全性に欠けているということはできないけれども、ゴールから90㎝程度しか距離のないゴール裏の近くに設置された床窓の枠については、手で窓枠の上部の壁を押すなどして回避措置を取ることが難しいものであることに加え、上部の壁に手を付けたとしても勢いを殺しきれずに窓枠に足が接触するなどすれば、材質も鉄製で、形状も平面でないことから、骨折等の傷害を負う危険性があるといえる。

そのため、走り込んだ勢いが減速しにくいゴール裏近くに床窓の枠が来るような状況でゴールを配置して本件体育館を使用する場合には、窓枠にクッションを設置するなど事故防止のための措置を講じなければ、バスケットの試合中、シュートをする際に勢いよく走り込むという通常の使用方法により、利用者が負傷するおそれがあるといえるから、本件体育館のゴールないしその配置に通常有すべき安全性を欠いている状態があるというべきである。」

として、

「被告京都市は、本件体育館について、ゴール裏近くに窓枠が来るような状況で本件体育館のゴールを使用することが想定されながら、上記のような事故防止措置を講じて、通常有すべき安全性を確保することがなかったのであるから、本件体育館のゴールないしその配置は、通常有すべき安全性を欠いている状態があったというべきであり、国賠法2条1項の責任を負う。」

と判断しました。

被告協会の責任

また、裁判所は、大会主催者である被告協会について

「ミニバスは、身体的に未熟な12歳以下の小学生により行われるものであるから、主催者である被告協会は参加者の安全に配慮する義務があり、ゴール裏近くに床窓の枠があり、通常の使用方法により骨折などの傷害が生じる危険性のある状況にある場合には、窓枠にクッションを設置したりするなど事故防止措置を講じなければならなかったといえる。」

とした上で、

「そうであるにもかかわらず、被告協会及びその指導者は、窓枠にクッションを設置するなどせず、ゴールないしその配置の危険な状態のまま大会を開催したのであるから、原告に対し、安全配慮義務違反ないし使用者責任に基づく損害賠償責任を負う。」

と判断しました。

営造物責任とは何か

国家賠償法2条1項は

「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」

と規定しています。

これを営造物責任といいます。

ここでいう「公の営造物」とは、国または公共団体により公の目的のために用いられる人的・物的施設の全体をいい、例えば学校・病院・道路・鉄道などがこれに当たります。

これと似たものに、土地工作物責任があります。

民法717条1項は

「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」

と規定しており、これを土地工作物責任といいます。

営造物責任も土地工作物責任も「設置又は管理(保存)に瑕疵があること」つまり当該施設が通常備えているべき安全性を欠いていることが要件となります。

もっとも、営造物責任については、土地に定着していることは要件ではないため、土地の工作物よりも広い概念であると考えられています。

また、営造物責任については、国または公共団体の過失の存在は必要ないとされています(最高裁昭和45年8月20日判決)。

スポーツ中の事故については、グラウンドや体育館、プールなどの公共の施設における設置や管理の瑕疵によって負傷したという事案は数多く存在しています。

このホームページ上でもできる限り多くの事例を紹介していければと思っています。

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