部活動顧問の教員に実力アップを期待してはならない理由

2018.11.21 弁護士コラム

学生や生徒がスポーツを楽しむ場の1つとして学校内の部活動があります。

ところが、部活動に所属する部員の保護者から顧問の教員に対して

「もっと練習をしてほしい」

「土日も練習や試合をやるべき」

「以前の顧問はもっと熱心だった」

などといった要求や苦情を言っているとのことでした。

このような要求が教員の過重労働につながる要因の1つとなっていることをご存知でしょうか?

現在、教職員の働き方改革についての議論が行われていることは報道で知っているという方々も多いと思います。

そこで、私からは、視点を変えて、部員や保護者は顧問の教員に実力アップを期待してはならないという点について説明してみたいと思います。

部活動の生い立ち

まず、そもそも学校内での部活動がどのようにして始まったのかについて考えてみたいと思います。

これから述べることは私の想像にすぎませんが、当たらずとも遠からずだとも思っています。

学校を終えて帰宅した後、共通の趣味を持つ生徒たちが集まって趣味である野球に興じていました。

ある時、一人の生徒が言いました。

「学校が終わって帰宅してからもう一度集まるのって面倒だよね。いっそのこと学校が終わったらそのまま運動場で野球ができれば良いのに。」

すると、他の生徒も言いました。

「もしそれができたら、もっと人が集まるかもしれないね。」

後日、生徒が担任に対して言いました。

「先生、授業が終わった後、運動場で野球したいんですけど、いいですか?」

すると、担任は「自分の一存では答えられないから、校長先生に聞いてみよう。」と答えました。

担任は、校長に対して「生徒たちが授業が終わった後に運動場で野球がやりたいと言っています。いかがいたしましょうか?」とお伺いを立てました。

すると、校長からは「いいんじゃないか。でも学校内で事故があってはいけないから誰かが見守っておかないと。そうだ、君が立ち会っておきなさい。」と言われました。

担任は「なぜ自分が?」と思いつつ、引き受けることになりました。

こうして、授業が終わった後、生徒たちは担任が見守る中で、野球を始めました。

すると、他にも野球がやりたいという生徒たちも集まってくるようになり、次第に人数も増えていきました。

ところが、生徒の中には野球ではなくバスケットボールやバレーボールが好きな生徒もいました。

「なぜ野球は運動場を使っていいのに、他のスポーツは体育館を使ってはいけないのか?」という不満から、「私たちも授業が終わったら体育館でバスケットボールやバレーボールをやりたい。」と申し出てくる生徒が現れました。

こうして、いろいろなスポーツを生徒がやりたいと言い出しました。

ところが、これがきっかけで学校内が活気にあふれるようになり、学校全体の雰囲気が良くなりました。

その様子を見て校長は「学校内でスポーツをすることで雰囲気が良くなるのであれば、今後も力を入れていこう。ただ事故があってはいけないから、教員に見守ってもらうことにしよう。」と考えました。

このようなことが各地の学校で相次ぎ、広がりを見せていきました。

こうして、あらゆるスポーツが学校内の部活動として全国的に広まることになりました。

部活動は自主的・自発的活動である

これが部活動の始まりだと考えられます。

つまり、部活動は、学校が設置したものではなく、生徒たちが自主的・自発的に集まって始めたものなのです。

実際に、教育関連の法律には、「学校は部活動を設置しなければならない。」「生徒は部活動に加入しなければならない。」「教員は部活動における指導をしなければならない。」などという規定は一切存在しません。

学習指導要領の「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」に

生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、地域や学校の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすること。

と規定されているだけです。

つまり、部活動はあくまでも生徒の自主的・自発的な活動なのです。

教員の本来の業務

一方で、教員の本来の業務は何でしょうか。

答えは明確です。

「教科や科目を教えること」つまり授業です。

特に中学校や高校になると、教員はそれぞれ専門の教科や科目の授業を担当します。

逆に、それ以外の教科や科目を教えることはありません。

仮に生徒がわからないといって質問したとしても、専門外の教科や科目であれば「自分はわからないから〇〇先生に尋ねなさい。」と答えることでしょう。

このことは生徒だけでなく保護者も十分に理解できると思います。

教員にとって部活動は専門外であるケースが多い

では、教員が顧問として部活動で技術指導をすることはできるでしょうか。

先ほどもいったように、教員の本来の業務は専門の教科や科目の授業です。

それ以外のことは専門外だといえます。

つまり、担当するスポーツや顧問という業務そのものについては専門外なのです。

顧問の中には、部員に対しての技術指導に長けていて、部員やチームの実力アップを図ることができる方々もいらっしゃいます。

なぜそのようなことができるのかといえば、その教員にはそのスポーツに対する知識と経験があるからにほかなりません。

しかし、そのような教員はほんの一握りにすぎません。

大多数の教員は顧問を務めているスポーツそのものをやったことがないのです。

顧問に期待できること

このように考えると、顧問の教員に部活動を通じての実力アップを期待することができないことはご理解いただけるのではないでしょうか。

では、何のために顧問がいるのか?という疑問を持つ方もいらっしゃることでしょう。

その点については、冒頭の部活動の生い立ちを思い出してください。

教員は、生徒たちの安全を図るための見守りとして立ち会うことになりました。

つまり、顧問に期待するべきことは安全管理なのです。

実力アップへの過度の期待が事故を招く

「せっかく部活動に入っているのだから、実力アップやチームの勝利のために頑張るべきだ。」という保護者の方もいらっしゃることでしょう。

もちろん、お子さんが部活動で一生懸命練習しているのですから、上手くなってほしいと思うのは当然でしょうし、チームが試合で勝つ姿を見たいことでしょう。

しかし、その期待が大きくなりすぎると、顧問による指導も熱を帯びてきます。

そして、それが部員に対しての過度な練習を課したり、体罰にまで発展してしまいます。

時には事故が起きることにもなります。

実際に重大な結果を招く事故が多発しているのです。

そして、その被害者はいうまでもなく生徒、つまり子供なのです。

実力アップのために何をするべきか

顧問に過度な期待を寄せてはならない、だからといって実力アップも目指してもらいたい、ではどうすれば良いのかとお考えだと思います。

それには練習しかありません。

しかし練習は部活動でなければできないというものではありません。

自宅でもできることはたくさんあるはずです。

勉強でもそうでしょう。

授業を受けるだけで成績アップができるのであればそれでいいかもしれません。

しかし、より成績をアップさせたいと思えば、自宅で自習したり、塾に通ったり、家庭教師を雇ったりするのではないでしょうか。

スポーツも同じです。

部活動での練習だけでは実力アップが見込めないと思うのであれば、自宅でできる練習をやるべきでしょう。

部活動も自主的なのですから、それ以外の練習も自主的にやるべきです。

顧問の教員に過度に期待するよりも、自分自身の努力を惜しまないことが、実力アップのために必要なことだと思います。

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