フットサルのゲーム中における接触により負傷したとして損害賠償を請求した事案

2020.06.24 スポーツ中の事故

東京地方裁判所平成19年12月17日判決

事案の概要

本件は、原告が、フットサルのゲーム中に被告と接触して負傷し、後遺障害を負ったとして、被告に対し、不法行為に基づき、損害賠償を請求した事案です。

平成14年8月4日、フットサルのゲームに参加していた原告及び被告が接触した結果、原告は、右脛骨関節内骨折の傷害を負いました。

本件事故の態様について、原告が「原告がボールをドリブルしていたところ、被告は、その後方から激しいチャージを行い、その膝付近を原告の右膝の裏に激突させた。」と主張したのに対し、被告は、「原告がボールをドリブルした際、ボールが原告よりもやや離れたことから、被告は、原告から見て左斜め前方の位置から、そのボールを奪いに行ったところ、右足を地面に付けていた原告と、左足が衝突した。」と主張しました。

この点について、裁判所は、

「フットサルのゲームは、1チーム5名が参加するから、本件ゲームに参加していた者は、原告及び被告以外に8名いたことになるところ、本件事故を間近に目撃し、かつ、その状況を記憶している者は見当たらないから、差し当たり原告及び被告の各供述を吟味するほかない」

とした上で、本件事故に至る経緯は、概ね次のとおりであったものと認定しました。

  • 原告は、被告の属する敵チームとの間で行われた本件ゲームに参加していたところ、自陣から、ボールを保持して敵陣内に入ろうと、ドリブルをして、センターサークル内に進もうとした。
  • これに対し、敵チームのAは、これを阻止しようとして、センターラインにほぼ沿って、原告に接近すべくセンターサークル内に入っていった。
  • そこで、原告は、自陣の右方にいた同じチームに属するBに対し、ボールをパスした。
  • これを見た被告は、Bに向かって接近しようとした。
  • これに対し、Bは、パスをした地点から更にセンターサークル内に前進していた原告に対し、ボールをパスし、原告は、これをトラップした。
  • すると、Aは、原告がセンターラインを越えてこないように、又は原告からボールを奪おうとして、原告に接近してきた。
  • そこで、原告は、向きを変え、サイドライン方向に向かって、ドリブルを開始した。
  • 原告がAと競り合うようにしてサイドライン方向に進んでいたところ、被告は、後方から原告を追い掛け、ほぼ横に並んだ地点で、左膝付近を、原告の右膝の側面辺りに衝突させた。

裁判所の判断

まず、裁判所は、

「このような本件事故の態様に照らすと、被告において、ことさら原告の右膝に自己の左足を衝突させようとしたことを示す証拠はないから、暴行又は傷害の故意があったとすることはできない。」

と判示しました。

また、裁判所は、

  • フットサルは、ゴールキーパーを含めて5人ずつのチームに分かれた上で、ボールを蹴るなどしてゴールを入れて、得点を競うことを目的とするスポーツであるから、ゲーム中においては、ボールの獲得を巡って、足と足が接触し合う局面がどうしても出てくることは、容易に想定されるのであって、フットサルの正規のルール上も、過剰な力を用いて体を投げ出し、安全を脅かす場合以外は、反則として禁じられていない。
  • しかも、ボールを保持し、又は保持しようとする者としては、相手方にボールを奪われまいとして、相手方の動作を予想して、これとは逆の動作をすることが頻繁にあることも、経験則上明らかである。

とした上で、

「競技者において、相手方の動作を予想した上で、相手方の身体との衝突によって、相手方に傷害を生じさせる結果を回避すべき義務に違反したことが肯定されるのは、相当程度限られた場合になるものといわざるを得ない。」

との判断基準を示しました。

そして、裁判所は

「本件事故においても、その態様に照らして、被告において、左足が原告の右足と衝突するであろうことまでは、予見することができたということはいえたとしても、更に進んで傷害を生じさせる結果までは、予見することができたと認めるに足りる的確な証拠はないから、過失があったとすることはできない。」

「原告に生じた結果からすると、右膝に加わった外力は、相当なものであったと推認されるが、そうであるからといって、直ちに被告に過失があったことにはならない。」

と判示しました。

その結果、原告の請求は、理由がないものとして棄却されました。

動画撮影の重要性について

本件において、裁判所は、「本件事故を間近に目撃し、かつ、その状況を記憶している者は見当たらないから、差し当たり原告及び被告の各供述を吟味するほかない」として、事故状況についての事実認定を行い、その結果、被告の故意・過失を認めませんでした。

スポーツ中の事故は一瞬の出来事であり、加害者・被害者といった当事者はおろか、事故状況を目撃していた人であっても、それを言葉で表現することが困難であったり、記憶が曖昧になっていったりすることで、正確な事故状況を裁判所に理解してもらうことができないことがあります。

それだけに、スポーツの試合については、動画を撮影しておくことを強くお勧めします。

本件についても、事故状況を撮影していた動画が存在していたら、結論が変わっていたかもしれません。

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