ゴルフコースで被告が打った球が同伴競技者の左眼に直撃して後遺症が残った事例

2018.10.17 スポーツ中の事故

東京地方裁判所平成27年3月26日判決

事案の概要

本件は、原告が被告及び知人2名とともにゴルフコースでプレーした際、被告が打ったバンカーショットの打球が原告の左眼に直撃したことにより、続発性緑内障を発症して後遺障害等級の第8級相当の視力低下、視野欠損の後遺障害を負ったとして、被告に対して不法行為に基づく損害賠償を求めた事案です。

裁判所の判断

被告の過失について

裁判所は、被告の過失について

「ゴルフ競技においては、硬質の小型ボールを用い、かつ、その打球の速度が非常に速いため、打球が他の競技者に当たった場合に重大な傷害を負わせる可能性があることは明らかであるから、競技者が、ショットを打つ場合、自らの打球が他の同伴競技者等に当たらないように、他の同伴競技者等やその周囲の状況に十分注意を払うべき注意義務を負う。そして、ゴルフ競技者の打った球が、狙った方向に飛ばずに、右方に直角に近い角度で飛び出すこと(いわゆるシャンク)があり得ることは、ゴルフ競技の経験者であればよく知られているものである。」

とした上で、

「これを本件についてみると、被告は、バンカーショットを打つに当たり、シャンクすることも当然予想され得る状況であったことから、原告を含む同伴競技者の動静について十分に意を払い、その位置を目視して、原告を含む同伴競技者がシャンクしても打球が当たらない安全な場所に位置しているのかどうかを確認する義務を有していたものというべきである。しかし、被告は、原告が安全な場所にいると軽信して、漫然、原告の位置、動静等を目視で確認することなく、「打ちます」と声掛けをしただけでアドレスに入り、三、四十秒後にバンカーショットを打ったものであるから、被告が上記注意義務に違反したものであることは明らかであり、被告が「打ちます」との声掛けをした事実があるからといって被告の上記注意義務を果たしたものとはいえない。」

と被告の過失を認めました。

原告の過失について

他方で、裁判所は、

「競技者は、他の同伴競技者がショットの体勢に入った際には、競技者は、打者の後方の安全な場所に待機して、ショットに注意し、同伴競技者の打ったボールの方向、位置を確認すべき義務を負うところ、原告は、被告の打球の位置、動静に注意を払わず、自ら危険な場所にいたものであって、重大な過失がある」

との被告の主張について、

「ゴルフ競技において、同伴競技者は、他の競技者のショットした打球が自らに当たる可能性がある上に、他の競技者のショットがシャンクするなどした場合にはその打球の方向が不規則になり得ることから、自らに打球が当たって負傷する事故が発生することを未然に回避するため、他の競技者がショットする場合には、その打球が飛来する可能性のない、後方等の安全な場所に移動して、ショット及び打球の方向を注視するべき注意義務を負う。」

とした上で、

「これを本件についてみると、原告が、本件事故時、被告がバンカー内で「打ちます」と声掛けを聞き、被告の打球の当たる場所から退避しようとして被告の後方に向けて移動を開始したものと認められるものの、原告及び被告のそれぞれの正確な位置関係は判然としない。しかしながら、現実に被告が打ってシャンクした打球が原告に当たったことからすれば、原告が、被告のショットがシャンクした場合に打球が飛び得る範囲内にとどまっていたことは明らかであり、また、原告が被告の動静や打球等を注視していたものと認めるに足りる証拠はないこと、また、退避を開始してから約40秒程度の時間的余裕があったことからすれば、原告がその状況を察して直ちに小走りで退避したのであれば被告の後方等の安全な場所に移動することは可能であったものと考えられる。そして、このような原告の退避行動が不完全であり、かつ、ショット及び打球の方向を注視しなかったことが本件事故発生の一因となっていることは明らかであるから、原告には、同伴競技者としての上記注意義務を怠った過失があるというべきである。」

として、被害者である原告の過失も認めました。

親睦の場が損害賠償請求訴訟に発展することがある。

一般に、スポーツは、勝敗を決することが目的であるといえますが、ゴルフに関しては、勝敗というよりも、友人・知人、会社の同僚や上司・部下、取引先などの一定の人間関係にある人同士の親睦を深めるために行われることが多いといえます。

本件の裁判では、被害者である原告と加害者である被告とは中学校・高校の同級生でした。

このような親睦の場でのたった1球の出来事が、損害賠償請求訴訟で原告・被告として争うことになり、しかもお互いの過失について主張・立証し合うということになってしまいます。

お互いがけがをしないように十分な注意を払っていれば、このような事態に陥ることはなかったといえるでしょう。

ゴルフに関しては老若男女を問わず楽しめるスポーツですし、ゴルフを生きがいのように感じて楽しんでおられる方も多いと思います。

だからこそ、生涯スポーツとして楽しめるように、本件のような事故が起きないように十分に注意するようにしていただきたいと思います。

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