ゴルフプレーヤーの打球が他のプレーヤーに当たり受傷した場合のキャディ及びゴルフ場運営会社の責任

2018.10.29 スポーツ中の事故

岡山地方裁判所平成25年4月5日判決

事案の概要

本件は、被告会社が運営するゴルフ場でプレー中、被告Y1が打ったボールが左目に当たる事故により損害が生じたと主張する原告が、被告Y1、本件事故当日同行した本件ゴルフ場のキャディである被告Y2及び被告会社に対し、損害賠償を請求した事案です。

平成21年11月14日、本件ゴルフ場においてゴルフコンペが開催されました。

原告・被告Y1・甲田及び乙野の四人がグループとなり、被告Y2が担当キャディとして同行しました。

原告と被告Y1は、本件事故前にも何度か共にゴルフをプレーしたことがあり、お互いの技量の程度やプレー中のくせなどを認識している関係にありました。

プレーにおいて、原告は、自分のショットの後に、他のプレーヤーの動きを確認せずに他のプレーヤーのショット位置より前に出るというくせはありませんでした。

被告Y1は、打つ順番が来てからショットまであまり時間をかけることはなく、また、時々角度30度程度のシャンク(クラブのネック部分、つまりフェイスとシャフトのつなぎ目のところにボールが当たって右にボールが大きく飛び出すミスショット。ボールは無回転で真っ直ぐ高速で飛ぶ。)を打ってしまうことがありました。

本件グループは、午前8時30分頃、10番ホールからプレーをスタートしました。

被告Y2は、10番ホールからのプレーが開始された後、グループの各メンバーの技量を確認しました。

被告Y2は、本件ゴルフ場での約20年のキャディ歴から、13番ホールに着く頃には、原告と被告Y1はゴルフの経験があるので、ボールの位置を確認したりボールとグリーンまでの距離を伝えたり、ゴルフコースの形状や特徴を踏まえたショットのアドバイスをしたり、ゴルフクラブを選択したり運んだりするなどの必要はあるものの、プレーヤーが当然知っておくべきマナーやルール、例えば、プレーヤーは同伴プレーヤーがショットをするときはその前に出てはならず、ショットをしようとするプレーヤーは、ボールが飛ぶ可能性のある範囲に人がいないことを確認した後にショットに移らなければならないなどまでは注意する必要はないと判断しました。

原告と被告Y1が13番ホールで第一打を打ったところ、両名のボールは、いずれもグリーンから直線距離にして約110ヤードのフェアウェイ右サイドのラフ上に落ちました。

両名のボールは2メートル程度しか離れていませんでした。

ボールの落下地点とグリーンの間には、右側を上方とする傾斜面があるため、ボールの落下地点に立ったときにはグリーンにボールが乗ったか、乗ったとしてどの辺りかを目視することはできませんでした。

被告Y2は、原告と被告Y1の第一打目のボールの落下地点を確認し、両名に、同地点からグリーンまでの直線距離が約110ヤードであると教えると、両名が第二打を打つ位置から約40メートル離れた、フェアウェイ左サイドに止めたカートのそばに立ちました。

原告は、第一打目のボールが被告Y1よりややティグランドよりに落ちていたことから、被告Y1より先に第二打を打ちました。

原告は、次に被告Y1が原告の第二打位置から約2メートルしか離れていない位置から第二打を打つことを認識していましたが、被告Y1の動きを確認しないまま、原告の第二打のボールがグリーンに乗ったか確認しようと、被告Y1が第二打を打つ位置との関係では、角度にして30度、距離にして右斜め前8~9メートル付近の傾斜面まで前進しました。

被告Y1は、自分が時々30度程度のシャンクを打ってしまうことがあることを認識していたにもかかわらず、原告が第二打を打った後に右前方に進んでいることを把握せず、原告が第二打を打った位置から約2メートル程度しか離れていない位置に立つと、グリーン方向前方とボールにのみ注意を向け、いつもどおり特に時間を空けずに第二打を打ちました。

被告Y1の第二打のボールはシャンクし、角度にして30度、距離にして右斜め前方8~9メートル付近におり、被告Y1の「あっ」という声に振り返った原告の左目に直撃しました。

被告Y2は、原告が被告Y1の右前方に出ていることや、被告Y1が原告が右前方にいるにもかかわらず第二打を打とうとしていることを明確に認識していませんでした。

したがって、被告Y2が原告に対して後ろに下がるように指示したり、被告Y1に対して第二打を打つのを待つように注意したりすることはありませんでした。

原告は、本件事故後、病院に搬送され、鈍的外傷、左眼球破裂、眼球陥凹との診断を受け、左眼角膜・強膜縫合術や左眼増殖性硝子体網膜症手術を受けましたが、左目を失明しました。

裁判所の判断

裁判所は、加害者である被告Y1、被害者である原告だけでなく、キャディとして同伴していた被告Y2の過失について、それぞれ以下のとおり判断しました。

原告の過失について

「原告については、同伴プレーヤーは互いに他のプレーヤーがショットをする前にその前方に出てはならないとされているところ、原告の第二打のボールがグリーンに乗ったかどうかの確認に気を取られ、被告Y1のボールが右30度前方に飛ぶことはないと過信し、被告Y1の行動を確認しないまま不用意に前方に進んだことに過失が認められる。」

被告Y1の過失について

「被告Y1については、時々30度程度シャンクすることがあることを認識していたのであるから、第二打の際30度程度でシャンクした場合にボールが飛ぶ範囲内に原告を含むプレーヤー等がいるかどうかを確認すべきところ、グリーン方向にまっすぐ飛ぶものと過信して、また、原告に他のプレーヤーのショット位置より前に出るというくせがないことから、原告は前方に進んでいないと思い込み、原告の動向や存在を確認することなく第二打を打ったこと及び第二打をシャンクさせたことに過失が認められる。」

被告Y2の過失について

「被告Y2については、同伴プレーヤーは互いに他のプレーヤーがショットをする前にその前方に出てはならず、ショットするプレーヤーは、ショット前に打球が飛ぶ範囲内に同伴プレーヤー等がいる場合にはショットをしてはならないとされており、これに反する行動をプレーヤーが採ろうとする場合には同行するキャディとしてはこれを注意して阻止すべきところ、13番ホールまでの原告と被告Y1の観察の結果、その程度の基本的なマナーやルールまで両名に注意する必要はないと過信して両名の十分な観察を怠り、その結果、必要な注意喚起を行わなかった過失があるといわざるを得ない。」

過失割合について

以上の認定を踏まえて、裁判所は

「本件事故に関する過失割合は、原告が3割、被告Y1が6割、被告Y2が1割と認められる。」

と判断しました。

被告会社の責任

裁判所は、被告Y2 の雇用者である被告会社について、

「被告会社は被告Y2の雇用者として、民法715条に基づく責任を同人の過失割合の範囲で負う。」

と判断しました。

キャディに損害賠償責任を認めたことの意味

ゴルフのプレー中に同伴プレーヤーの打球が当たって負傷するという事故は多発していますし、多くの裁判例があります。

同種裁判例として「ゴルフコースで被告が打った球が同伴競技者の左眼に直撃して後遺症が残った事例」を参照してください。

もっとも、本件では、同伴プレーヤーだけでなく、キャディの過失を認めて損害賠償を命じました。

キャディは、ゴルフ場の従業員としてゴルフのプレーヤーに危険が生ずるおそれがある場合には、これを未然に防止して、プレーヤーの安全を保持すべき注意義務があると考えられます。

この注意義務に違反してプレーヤーに損害が生じた場合には、その損害を賠償するべき義務が発生することになります。

この結論自体は、法律的に考えると当然のことといえるでしょう。

このような事故を未然に防ぐためには、キャディとしては、プレーヤーの動向に常に注意を図るべきといえます。

と同時に、プレーヤーとしても、日頃から同伴プレーヤーがショットをする前にその前方に出ないようにするのは当然のこととして、キャディから注意を受けた場合には、直ちにそれに従う必要があるといえるでしょう。

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