スポーツクラブにおける施設の設置または保存に瑕疵があると判断された事例

2018.10.19 スポーツ中の事故

東京地方裁判所平成9年2月13日判決

事案の概要

本件は、スポーツクラブのプールで行われた水中体操に参加した後、水着のままロッカールームに通ずる廊下を歩行中転倒して受傷した原告が、本件事故発生当時、本件廊下について転倒等の事故発生防止のための設備を何ら設置しておらず、本件廊下には設置又は保存の瑕疵があったとして、スポーツクラブを運営する被告に対し、土地工作物責任(民法717条)に基づき、損害賠償を請求した事案です。

裁判所の判断

土地工作物責任について

まず、裁判所は、

「民法717条1項にいう「土地の作物」とは、土地に接着し、人工的作業によって成立したものであると解されているが、本件施設がこれに該当することはいうまでもなく、特に本件廊下について瑕疵の有無を検討すべきである。」

とした上で、

「同条項にいう「工作物の設置又は保存に瑕疵ある」とは、当該工作物が当初から、又は維持管理の間に、通常あるいは本来有すべき安全性に関する性状又は設備を欠くことをいい、その存否の判断にあたっては、当該工作物の設置された場所的環境、用途、利用状況等の諸般の事情を考慮し、当該工作物の通常の利用方法に即して生ずる危険に対して安全性を備えているか否かという観点から、当該工作物自体の危険性だけでなく、その危険を防止する機能を具備しているか否かも併せて判断すべきである。」

との判断基準を示しました。

そして、裁判所は、

「本件事故当時、被告は、階段の一階の上り口、一階と二階との間の踊り場、二階に上がった所にそれぞれ足をふくためのマットを置き、階段の一階の上り口、一階と二階との間の踊り場には、身体をよくふくように促す注意書きを掲示していたが、プール、シャワー利用後よく身体を拭かず、水着が水分を相当含んだ濡れた状態のままで利用者が通行することが少なくなかったため、本件廊下は、ナラの小市松材質でフローリングされた床面上に水滴が飛散し、しばしば滑りやすい状態になったこと、殊に、前記コンクリート壁の端付近の箇所は、何らかの原因のために、利用者の身体から落ちた水滴が集まって小さな水たまりができやすく、この箇所に水がたまっていると滑りやすかったこと、利用者は素足で本件廊下を通行するので、転倒して受傷する危険性があったこと、被告の係員は、本件廊下やロッカールーム等をおおむね一時間おきに巡回して床の水をふき取ったり、プールでのレッスンが終了した後も、時間を見計らって本件廊下の水をふき取る等して清掃を行っていたが、その清掃が行われる前には、本件廊下、殊に、前記コンクリート壁の端付近の箇所は、小さな水たまりができる等して滑りやすい状態になっていたこと、しかるに、カラーすのこを敷く等して右危険を防止する有効な措置が執られていなかったこと、以上のとおりであったから、本件廊下は、一階から濡れた水着のままで上がってくるプール利用者が通行するため、利用者の身体から水滴が落ち、素足で通行する利用者にとって滑りやすい箇所が生ずるという危険性を有していたものというべきである。」

として、

「本件施設には、設置又は保存の瑕疵があったものと解するのが相当である。」

と判断しました。

過失相殺について

他方で、裁判所は、原告の過失について、

「本件スポーツクラブ開設から本件事故当時までの間、本件廊下において水に足を取られて滑った会員は、原告のほかにいなかったこと、原告は、本件事故直前に、本件廊下の前記コンクリート壁の端付近の箇所に水がたまっていることに気が付いていたこと、原告は、階段を上りきって左折した瞬間に足を取られたこと、原告には、この間の足下の状況についての正確な記憶がないこと、以上の事実が認められる。」

と認定した上で、

「右認定事実に基づいて考えると、原告は、本件廊下を歩行するに際し、フローリングされた床面上に水がたまっていることに気が付いたのであるから、足下の状況に十分注意し、水を避けて歩行すべき義務があるのにこれを怠り、漫然と歩行した過失が認められる。」

とし、

「よって、本件賠償額の算定にあたっては、原告の右過失を考慮し、原告の損害に4割の過失相殺をするのが相当である。」

と判断しました。

施設運営者だけでなく施設利用者も注意を

健康志向からスポーツクラブやジムで汗を流すという方も多いと思います。

今では24時間利用可能なスポーツクラブも増えてきています。

そうした中、トレーニング用の器械やダンベルなどの器具については、利用者としても取り扱いに十分に注意していることでしょう。

しかし、本件のように、プールからロッカールームへの移動中に転倒したことでけがをするということもあります。

施設運営者としても、器械・器具の取り扱いについては十分に注意するように声をかけているとは思いますが、事故はトレーニングの場面だけで起きるわけではありません。

施設運営者だけでなく利用者も本件のような事故が起きないように注意して、健康維持につとめていただければと思います。

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