中学校のクラブ活動中に顧問教諭が生徒を親しみを込める気持ちで1回蹴ったことが違法かが問題になった事例

2019.01.12 体罰

東京高等裁判所平成17年12月22日判決

事案の概要

本件は、被告が設置する市立中学校の生徒であった原告が、所属していた課外のクラブ活動の顧問である教諭に腰部を蹴られたという違法な行為により精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を請求した事案です。

平成12年9月27日午後5時過ぎころ、A中学校剣道部の部活動中、原告が剣道場において友人と話をしていたところ、B教諭が、原告の背後から、原告が痛みを感じる程度の強さで、稽古着、垂れを着用した上からその左腰辺りを1回蹴りました。

原告は、痛みが消えないので間もなく下校し、母に一部始終を話し、母と共に整形外科へ赴き診療を受けました。

そして、同日夜、母が、B教諭の自宅に電話をかけ、B教諭が原告の腰部を蹴ったことについて苦情を述べたところ、B教諭は、「痛みを与えてしまったのなら申し訳ない。明日管理職に報告し、謝罪に伺います。」と答えました。

翌28日午後7時30分ころ、B教諭は、同教諭から説明を受けた校長と共に原告の自宅を訪れ、謝罪しました。

裁判所の判断

B教諭が原告を蹴ったいきさつについて、B教諭の陳述書には、原告が友人に「ああ疲れた、私も年ね」と言ったので、「何言っているんだ、まだ若いくせに」と部活の顧問と部員の親しみを込めて蹴った旨の部分がありました。

また、その場に居合わせた生徒の陳述書中にも、B教諭が、原告の冗談を受けて、あるいは冗談に突っ込みを入れるという感じで、軽く蹴った旨の部分がありました。

これに対し、原告は、友人と話をしているといきなり蹴られた旨供述しましたが、なぜ蹴られたのかについては説明しませんでした。

これらの事情を踏まえ、裁判所は、

「部活の練習中に無駄話をしたことに対する注意あるいは体罰として蹴ることは一般論としてはあり得ることであるが、B教諭は部員に注意するために手を出したり蹴ったりすることは一切ない旨の部分に照らせば、B教諭が蹴ったのは体罰あるいは注意の手段としてではなく、B教諭の陳述書のとおりのいきさつであったと認めるのが相当である。」

と認定しました。

もっとも、裁判所は、その蹴りの強さについて

  • 原告は「そんなに弱くはなくて、だからといってそう強くもなかったという感じです。でもバランスを崩すくらい強かった。」旨供述していること
  • 原告が帰宅後一部始終を母親に話し、整形外科へ赴き診療を受け、医師にも先生に腰を蹴られた旨述べていること

に照らしても、痛みを感じ、それが持続する程度の強さであったことが認められることから、

「B教諭としては、原告の冗談に突っ込みを入れる気持、親しみを込める気持であったとしても、教師が生徒を背後から突然痛みを感じるような強さで蹴りつけることは違法な有形力の行使である暴行に該当するというべきである。」

と判示しました。

そして、裁判所は、

「本件暴行は、被告市立中学校の教師であるB教諭が部活動の指導時間中に指導の場である道場において部活動の参加者である原告に対して加えたものであり、その態様にかんがみると、B教諭が原告に対して本件暴行を加えたことについて、被告は、国家賠償法1条1項に基づき、原告が被った損害を賠償する責任を負うというべきである。」

と結論づけました。

懲戒の意図がなくても「暴行」である

暴行とは、人の身体に向けた有形力の行使を言います。

有形力とは物理的な力のことをいい、典型的には殴る、蹴るなどの暴力がこれに当たります。

本件では、部員に対する懲戒の意図はなく、単に部員の冗談に対して突っ込みを入れただけでしょう。

しかし、その行為そのものを客観的にみれば、暴行に該当することは明らかです。

本件では、部員にけがは認められませんでしたが、もし部員がけがをしていた場合には傷害罪に該当することになります。

昨今では、教員が生徒に対して暴行を振るったと頻繁に報道されていますが、それがどのような意図であったにせよ、暴行罪や傷害罪に問われることがあることは自覚しておくべきだと思います。

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