相続財産はどのようにして管理するべきか

2018.10.06 弁護士コラム

共同相続人による相続財産の共同管理

相続財産の管理とは、相続が発生してから相続人が確定し、遺産分割により具体的な遺産の帰属が決まるまでの間、遺産の保存、利用および改良行為を行うことをいいます。

遺産分割がなされるまでの間は、遺産の最終帰属は確定せず、複数の相続人がいる場合は共有財産とされます。

熟慮期間中の遺産管理

相続開始後、相続人は、相続の承認(法定単純承認を含む)または放棄をするまで、「自己の固有財産におけるのと同一の注意」をもって遺産を管理すれば足ります(民法918条1項)。

相続の承認・放棄により相続人が誰であるかが具体的に確定するまでの間、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求により、いつでも、「相続財産の保存に必要な処分」(例えば、相続財産管理人の選任、財産処分の禁止、占有移転の禁止、財産目録の作成など)を命じることができます(民法918条2項)。

「相続財産の保存に必要な処分」が意味を持つのは、共同相続人の間で対立が激しく、相続財産の適正な管理・保存が期待できない場合、相続財産の性質・価額に照らしてみたときに、相続人に財産の適正な管理・保存が期待できない場合です。

「相続財産の保存に必要な処分」として相続財産管理人が選任されたときには、この者は不在者の財産管理人と同様の地位(したがって、相続人の法定代理人の地位)に置かれるほか(民法918条3項)、相続人と「法定委任」関係にあることから、善良な管理者の注意をもって遺産の管理事務を処理しなければならないものとされています。

単純承認後、遺産分割が終了するまでの遺産管理

単純承認後から遺産分割が終了するまでの管理については、相続法には規定がないため、物権法の共有に関する規定に従って規律されることになります。

共同相続人は、その相続分に応じて各相続財産を使用できます(民法249条)。

保存行為(建物の修理、税金の納入、共有名義の相続登記、無効な登記の抹消、不法占拠者の排除、時効の中断など)は、各相続人が単独でできます(民法252条但書)。

管理行為(賃貸中の財産の賃料の取立て、現金を預金にするなど)は、各相続人の相続分による多数決によって決定されます(民法252条)。

処分行為や変更行為(相続財産の売却、担保の設定、農地の宅地への変更など)には、相続人全員の同意が必要です(民法251条)。

これらにかかった経費は、「相続財産に関する費用」として相続財産の負担となります(民法885条)。

相続財産管理人による管理

相続人全員の合意によって、特定の者に財産管理を委託できます。

この場合管理者の管理権の範囲は委任契約ないし委任の規定によります。

また、遺産分割の申立てがあった場合には、遺産分割審判前の保全処分として、家庭裁判所が遺産管理者を選任することがあります。

遺産管理者には不在者の財産管理人に関する規程が準用され、やはり相続人の代理人とみなされます。

遺産管理者には遺言執行者のように、相続人の処分権が制限される規定がありませんので、相続人は相続財産に関する管理・処分権を失いません。

しかし、相続人は遺産管理者の管理権行使を受忍する法的義務を負うことから、遺産管理者の管理権行使と抵触するような管理権行使は許されないとされています。

相続財産の占有

占有の態様と取得時効

共同相続人の一人が、相続開始前から相続財産である不動産に居住するなど相続財産を占有している場合、この相続人の相続分を超える部分の占有は他主占有であり、特段の事情(外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づく事情を証明して自主占有となる場合)がない限り、取得時効は成立しません。

明渡請求

相続財産を占有する相続人の共有持分権が他の相続人よりも少なくても、自己の持分に基づいて共有物を使用収益する権限を有し、占有するものですので、多数持分権者が明渡しを求めるためには、その理由を主張し立証しなければなりません。

最高裁昭和41年5月19日判決

「思うに、共同相続に基づく共有者の一人であつて、その持分の価格が共有物の価 格の過半数に満たない者(以下単に少数持分権者という)は、他の共有者の協議を 経ないで当然に共有物(本件建物)を単独で占有する権原を有するものでないこと は、原判決の説示するとおりであるが、他方、他のすべての相続人らがその共有持 分を合計すると、その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといつて(以下こ のような共有持分権者を多数持分権者という)、共有物を現に占有する前記少数持 分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。けだし、こ のような場合、右の少数持分権者は自己の持分によつて、共有物を使用収益する権 原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。従つて、 この場合、多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである。」

使用収益による利得の返還

占有する相続人が自己の相続分を超えて使用収益している場合につき、最高裁は、「被相続人と同居の相続人との間において、被相続人死亡後、遺産分割で建物の所有関係が確定するまでの間、引き続き同居の相続人に建物を無償で使用させる旨の合意があったものと推認し、被相続人死亡後は、その他の相続人を貸主、同居の相続人を借主とする使用貸借契約が存在することになるから、不当利得の問題は生じない」と判示し、他の相続人は不当利得として賃料相当額を請求できないとしています。

最高裁平成8年12月17日判決

「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物にお いて被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の 相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右 建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを 無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡 した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承 継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借 契約関係が存続することになるものというべきである。」

同居の相続人に建物を無償で使用させる旨の合意がない場合

対価相当分の支払い

占有する相続人が、自己の相続分および管理費用を超える使用収益を得ている場合については、他の相続人に対し対価相当分を支払うのが相当であると考えられます。

費用償還の請求

占有する相続人が、自己の相続分および使用収益の対価を超える管理費用、有益費を支出する場合は、他の相続人に対し費用償還を認めるのが相当であると考えられます。

裁判例として、未分割の遺産である借地上の建物に居住する相続人の一人が、地主に支払った地代については委任契約に基づき、また、修繕費および火災保険料については事務管理に基づき、いずれも他の相続人らに対して費用の償還請求が認められた事例があります。

相続財産から生じた果実

相続開始から遺産分割までの間に共同相続財産である不動産から生じる賃料債権は、遺産とは別個の財産であり、各相続人がその相続分に応じた債権として取得することになります。

最高裁平成17年9月8日判決

「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共 同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであっ て、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するもの と解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生 ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものとい うべきである。

したがって、相続開始から本件遺産分割決定が確定するまでの間に本件各不動産 から生じた賃料債権は、被上告人及び上告人らがその相続分に応じて分割単独債権として取得したものであり、本件口座の残金は、これを前提として清算されるべきである。」

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