ひき逃げ・無保険の場合の被害者救済-政府保障事業について

2018.10.05 弁護士コラム

交通事故の被害に遭った場合、被害者は加害者が加入している任意保険会社から損害の補償を受けることになります。

また、強制保険としての自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)からも保険金を受領することができます。

しかし、例えば、交通事故の加害者がひき逃げをしてそのまま行方知れずとなってしまった場合、加害者が誰であるのか、任意保険に加入しているのか、どの任意保険会社に加入しているのかを知ることができないため、任意保険会社からはおろか、自賠責保険に対しても請求することができません。

また加害者が自賠責保険に加入していないいわゆる「無保険」の場合には、自賠責保険から補償を受けることができません。

このような場合、被害者は加害者本人に対して損害賠償を請求することになりますが、加害者に損害をてん補する資力がないということも考えられます。

そうすると、被害者は交通事故の被害に遭ったにもかかわらず、誰からも損害の補償を受けられない状況に陥ってしまうことになります。

このような「泣き寝入り」の状態にならないようにするために、「政府保障事業」という制度があります。

今回は、政府保障事業について紹介したいと思います。

政府保障事業の概要

政府保障事業とは

自動車損害賠償保障法第71条

政府は、この法律の規定により、自動車損害賠償保障事業を行う。

政府保障事業とは、自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づき、自賠責保険(共済)の対象とならない「ひき逃げ事故」や「無保険(共済)事故」に遭った被害者に対し、健康保険や労災保険などの他の社会保険の給付や本来の損害賠償責任者の支払いによってもなお被害者に損害が残る場合に、最終的な救済措置として、法定限度額の範囲内で、政府(国土交通省)がその損害をてん補する制度です。

政府保障事業が適用されるための要件

自動車損害賠償保障法72条1項

政府は、自動車の運行によって生命又は身体を害された者がある場合において、その自動車の保有者が明らかでないため被害者が第3条の規定による損害賠償の請求をすることができないときは、被害者の請求により、政令で定める金額の限度において、その受けた損害をてん補する。責任保険の被保険者及び責任共済の被共済者以外の者が、第3条の規定によって損害賠償の責に任ずる場合(その責任が第10条に規定する自動車の運行によって生ずる場合を除く。)も、被害者の請求により、政令で定める金額の限度において、その受けた損害をてん補する。

政府保障事業の適用を受けるための要件は以下のとおりです。

自動車の運行によって生命又は身体を害されたこと

政府保障事業は、自賠責保険と同様に、交通事故のうちでも自動車による人身事故を対象としています。

したがって、生命又は身体を害されていない物損事故の場合には、適用の対象外となります。

自動車の保有者が明らかでないために運行供用者責任に基づく損害賠償請求ができない場合

いわゆるひき逃げを指しています。

ひき逃げの場合には加害車両を見ていないことが多く、保有者も不明であるため、被害者は誰に対して損害賠償を請求すればよいのかわかりません。

このような被害者を政府保障事業によって救済する必要があるということになります。

責任保険(共済)の被保険者(被共済者)以外の者が運行供用者責任を負担する場合

自賠責保険に加入していないいわゆる無保険車による事故や、盗難車の運転による事故で保有者に運行供用者責任が生じない場合を指しています。

これらの場合、運行供用者責任が被保険者に発生しないため自賠責保険の適用が受けられません。

そのため、被害者を政府保障事業によって救済する必要があるということになります。

被害者からの請求

政府保障事業は被害者からの請求しか認められていません。

したがって、加害者が支払いをしたとしても、政府保障事業に支払いを請求することはできません。

構内自動車による事故

自動車損害賠償保障法第72条第1項において「その責任が第10条に規定する自動車の運行によって生ずる場合を除く。」と規定しているように、いわゆる構内自動車の事故については政府保障事業の対象となりません。

しかし、構内自動車であっても、本来の用途を外れて一般道路を走行中に起こした交通事故の場合には、政府保障事業の適用があるとされています。

最高裁平成5年3月16判決

自賠法10条にいう「道路…以外の場所のみにおいて運行の用に供する自動車」であっても、その本来の用途から外れて道路上を走行中に事故が発生して、自動車損害賠償責任保険の被保険者以外の者の自賠法三条の規定による損害賠償責任が生ずる場合には、右事故につき、自賠法71条に規定する政府の自動車損害賠償保障事業の適用があるものと解するのが相当である。

最後に

政府保障事業への請求は損害保険会社(組合)の全国各支店等の窓口で受付します。

ちなみに、保険代理店では受付していません。

ひき逃げや無保険の場合であっても、最低限度ではあるものの、補償を受けられる場合があります。

決して泣き寝入りすることなく、ご相談いただければと思います。

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