「出世払い」は出世しなければ返済義務なし?-条件と期限

2018.10.05 弁護士コラム

経済力の低い若者などを金銭的に援助したいという場合に、「将来、出世をした時に返してくれたら良いよ」と言って、お金を貸すということがあります。

このようなお金のやり取りを一般的には「出世払い」といいます。

では、お金を借りた側は、実際に出世しなかった場合、その借金を返済する必要はないのでしょうか。

逆にいうと、お金を貸した側は借金の返済を要求することはできなくなるのでしょうか。

今回は「出世払いとは何か」についての法律の考え方について説明したいと思います。

条件と期限

ある法律行為に付随して、その法律行為に特別の制限を付加する定めを「法律行為の付款(ふかん)」といいます。

その代表的なものが、「条件」と「期限」です。

条件とは

条件とは、法律行為の効力の発生又は消滅を、実現するかどうかが不確実な将来の事実の成否によることとする付款のことをいいます。

条件には大きく分けて2つあります。

停止条件

停止条件とは、法律行為の効力の発生に条件が付されている場合をいいます。

例えば、「大学に合格したら時計を買ってあげる」という約束をしているとします。

この場合「時計を買ってあげる」という約束は贈与契約にあたります。

その贈与契約の効力が発生するのは「大学に合格した」という事実が発生した時です。

この「大学合格」という事実は、実際に大学受験をして大学側で合否の判断が行われなければわかりません。

その意味では実現するかどうかは不確実といえます。

したがって、「大学に合格したら時計を買ってあげる」という約束は、法律的にいうと、停止条件付き贈与契約ということになります。

解除条件

解除条件とは、法律行為の効力の消滅に条件が付されている場合をいいます。

例えば、「時計を買ってあげるが、大学に不合格だったら返してもらう」という約束をしているとします。

この場合、「買ってあげた時計を返してもらう」というのは贈与契約の解除にあたります。

この贈与契約の解除が行われるのは「大学に不合格だった」という事実が発生した時です。

この「大学不合格」という事実は、やはり不確実といえます。

したがって、「時計を買ってあげるが、大学に不合格だったら返してもらう」という約束は、法律的にいうと、解除条件付き贈与契約ということになります。

期限とは

期限とは、法律行為の効力の発生又は消滅を、実現するかどうかが確実な将来の事実の成否によることとする付款のことをいいます。

期限には大きく分けて2つあります。

確定期限

確定期限とは、到来する時期が確定している期限をいいます。

例えば「〇月〇日に売買代金を支払う。」という場合には、〇月〇日が確定期限となります。

不確定期限

不確定期限とは、到来する時期が確定していない期限をいいます。

例えば「私が死んだら土地をあげる。」という場合、「死亡」という事実は将来確実に起こりますが、それがいつなのかは確定していないということになります。

出世払いの「出世」は何か?

では、「出世をしたら返す」という出世払いはどれにあたるでしょうか。

「出世するかどうかは将来発生するかどうかは不確実なのだから、条件ではないのか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、判例は、「出世払いとは不確定期限であり、出世できないことが明らかになったときは、貸主は借金の返済を請求できる」と判断しています(大審院大正4年3月24日判決)。

つまり、出世できるかどうかは不確実な事実(条件)ではなく、出世できるかできないかはいずれ確実に決まる事実(期限)であるということになります。

ただ、いつ決まるのかがはっきりしていないため、「不確定期限」ということになるのです。

いつ期限が到来したといえるか

このように、出世払いは不確定期限であると考える場合、いつ期限が到来したと考えるべきでしょうか。

ここで、「出世したら返す」の意味をよく考えてみましょう。

本来であれば、借金をする場合には、「いつまでに返す」という期限を決めます。

このような期限を決めるのは、「そのときまでには返済の目処が立つから」だといえます。

借主側は、その期限までに返済の目処を立てることができるということができます。

つまり、「出生したら返す」とは「出世したら返済の目処が立つ」ということを意味しているといえます。

そのように考えると、返済できる目処が立った時点をもって「出世した」といえるということになります。

逆に、出世できないことが決まるというのは、返済できる目処が立たないことが確実になったということを意味することになります。

最後に

このように考えると、出世したかどうかにかかわらず、借主は返済しなければならなくなります。

つまり、借主からすれば、貸主からいつ出世した(出世しない)ことが確実になった、つまり期限が到来したといって返済を要求されるかわからないということになります。

そうなると、借主の保護に欠けるのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、もともと「出世払いでいいよ」というのは貸主の厚意によるものであるといえます。

このような貸主の厚意にいつまでも甘えているというのではなく、借りたものは返すという意思を持つことも必要なことだと思います。

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