教員は部活動の顧問を拒否するべきだと思う理由

2019.02.13 弁護士コラム

ブラック部活動という言葉には多くの意味を含んでいます。

その中の1つに、教員が事実上強制的に部活動の顧問に就任させられているという問題があります。

これが教員の長時間労働や過重労働となる大きな原因の1つとなっています。

私は、Twitterでの交流を通じて、教員だけでなく、生徒・保護者・教員の家族など様々な立場の方々から部活動に関する様々な意見を聞いたり、私なりの考えを述べさせていただいたりしていました(なお、現在はTwitter上での意見交流は行っていませんが、情報収入の目的で閲覧は継続しています)。

その中で、私が特に問題だと感じていたのは、

「教員はご自身が経験したことがないスポーツであるにもかかわらず部活動の顧問をやらされている」

ということでした。

部活動の顧問というと、一般的には、当該スポーツの技術指導を思い浮かべることでしょう。

ただ、経験したことがないスポーツの技術指導をするように言われても、ほとんどの方が無理だと思います。

仮に何らかの解説本などを見て勉強し、それを部員に伝えようとしたところで、それはあくまでも本の中での知識でしかなく、実践から得た知識ではないため、伝えることができないのです。

しかし、私がこの技術指導面よりももっと深刻な問題として考えたのは、

「経験したことがないスポーツであるからこそその危険性について無知であり、したがってどのような安全対策を採ればよいのかわからず、また安全対策を実践することもできない」

という点です。

そもそもスポーツには身体に対する危険性が内在するものですので、「ケガはつきもの」といえます。

しかし、このケガには、避けられるものと避けられないものとがあります。

この「避けられるケガ」のリスクをできるだけ下げていくために必要なのが安全対策です。

しかし、スポーツはそれぞれ異なるわけですから、その危険性も当然異なります。

その結果、採られるべき安全対策も異なることになります。

ここで、経験したことがあるスポーツであれば、多少なりともその経験の中で実際にケガをしたということもあるでしょう。

その意味では、「このような状況になればケガをするかもしれないから、そのようにならないようにするためにはどうすれば良いか」と想像することができます。

しかし、経験したことがないスポーツでは、そのような想像をすることすらできません。

当該スポーツの解説本を見ても、そのほとんどが技術指導に関するものであり、安全対策の内容について事細かに書かれているものはないでしょう。

したがって、そもそも安全対策についての知識を得る機会もないといえます。

また、仮に安全対策を想像することができたとしても、実際にそのとおりに実践することができるとはいえません。

頭ではわかっていても、体が動かないということはよくあることなのです。

では、部活動の顧問が当該スポーツの経験が教員であった場合に悪影響を受けることになるのは誰でしょうか。

それは、いうまでもなく、部員(生徒)です。

技術指導面に関していえば、それこそ自分で解説本を買って参考にすることもできますし、インターネットの動画サイトなどを見て参考にすることもできます。

しかし、安全対策面については、部員(生徒)だけでは限界があります。

しかも、部活動に入部した時に初めてそのスポーツを経験するという部員(生徒)も含まれていますので、部員(生徒)自身がそのスポーツに内在している危険性を認識していないことも考えられるのです。

つまり、部員(生徒)は、安全対策が十分に採られているとはいえない環境でスポーツを行っているという、大変危険な状況にあるといえるのです。

裁判例として紹介した「市立高校の生徒が体操部における平行棒演技の練習中に負傷し後遺障害が生じた事例」では、顧問教諭は体操競技の経験がなく、体操部の指導方法については民間の体操クラブの練習方法等を参考にするなどして独学で学んでいました。

おそらくこの教諭は顧問としての責任を果たしたいという思いで真面目に取り組んでいたことと思いますが、それでも甚大な被害を生む事故が発生してしまいました。

また、記憶に新しいところでは、平成29年(2017年)3月27日に栃木県那須町で発生した雪崩事故があります。

この事故は、登山講習会に参加していた高校の生徒や教諭らを巻き込み生徒7人と引率教員1人の計8人が死亡しました。

この雪崩事故で犠牲になった引率教員は登山経験がなかったといわれています。

いずれの事故についても、十分な安全対策が採られていなかったからこそ発生したものといえます。

教員にとって、部活動の顧問を引き受けるということは、長時間労働や過重労働につながるものであり、「やりたくない」という心境になることは十分に理解できます。

特に、経験したことのないスポーツの顧問を引き受けるというのは大変つらいものだと思います。

しかし、私は、部員(生徒)の生命・身体を守るためには、このような「やりたくない」「つらい」という心情的なものではなく、「やるべきではない」と思っています。

平成30年(2018年)3月に、スポーツ庁が「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定しました。

その中では、「指導・運営に係る体制の構築」として「学校の設置者は、各学校の生徒や教師の数、部活動指導員の配置状況や校務分担の実態等を踏まえ、部活動指導員を積極的に任用し、学校に配置する。」と明記されています。

この部活動指導員は、技術指導だけでなく、部員(生徒)の安全面での効果も期待できます。

また、部活動指導員の配置に関しては国からの補助金が配分されることになっています。

教員が経験したことのないスポーツに関する部活動の顧問を引き受けなくても部活動の運営は確保され、しかも安全面に配慮した体制も期待できる環境は整ってきています。

繰り返しますが、私は、部員(生徒)の生命・身体を守るという観点からすれば、安全対策を十分に採ることができない教員は、部活動の顧問を拒否するべきであると思います。

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