公立小学校において組体操の練習中に児童が4段ピラミッドの最上段から落下した事故

2018.10.05 学校行事

名古屋地方裁判所平成21年12月25日判決

事案の概要

原告は、平成19年9月20日午前10時15分ころ、被告が設置する名古屋市立小学校運動場において、組体操の練習をしていました。

本件事故時において、本件4段ピラミッドだけではなく、少なくとも他の2基の4段ピラミッドが組立てられており、教員Aは指令台の上で合図をし、教員Bは運動場中央付近の6年1組と6年2組の児童で混成の4段ピラミッドの補助に当たっており、本件4段ピラミッドと異なる方向を見ていまし。

3段目の児童らが2段目の児童の上に乗る際、土台の児童の間隔などがいびつな形になっていたため、2段目の児童もきれいな形になっておらず、足の置き場が以前と違っており、3段目の児童らは足が開いたような状態になりました。

さらに、3段目の児童らが2段目の児童に乗ったところ、2段目の児童は「痛い、痛い」などと述べていました。

3段目の児童の一人は、2段目の児童の体が動くため、足場が安定せず、バランスを保つため、頭を上げたような態勢となりました。

3段目の児童らは、バランスが悪く危険なため、やり直した方がよいか話していましたが、教員Aが合図を進めていったため、途中でやめることができず、合図に合わせて、立ち上がりました。

続いて、最上段にいた原告が、教員Aの合図で立ち上がったところ、3段目の児童らの体が揺れて、足場が安定せず、原告はバランスを保てなくなり、「おい、あぶねえ、あぶねえ。」などと述べ、しゃがんだり、しがみついたりすることなく、本件4段ピラミッドの南側に落下しました。

原告は、この落下事故により、左上腕骨外顆骨折の傷害を負いました。

そこで、4段ピラミッドの練習に際し、指導及び監督に当たった教員らに過失があったとして、原告が、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を請求した事案です

裁判所の判断

裁判所は

「本件小学校を設置する被告は、本件小学校における学校教育の際に生じうる危険から児童らの生命、身体の安全の確保のために必要な措置を講ずる義務を負うところ、体育の授業は、積極的で活発な活動を通じて心身の調和的発達を図るという教育効果を実現するものであり、授業内容それ自体に必然的に危険性を内包する以上、それを実施・指導する教員には、起こりうる危険を予見し、児童の能力を勘案して、適切な指導、監督等を行うべき高度の注意義務があるというべきである。

そして、4段ピラミッドは、最上位の児童は、2m以上の高い位置で立ち上がる動作を行い、かつ、安定するか否かは、3段目以下の児童の状況にかかってくるもので、落下する危険性を有する技であるから、指導をする教員は、児童に対し、危険を回避・軽減するための指導を十分に行う注意義務があると共に、最上位の児童を不安定な状況で立たせることがないように、最上位の児童を立たせる合図をする前に、3段目以下の児童が安定しているか否かを十分確認したり、不安定な場合には立つのを止めさせたりし、児童が自ら危険を回避・軽減する措置がとれない場合に補助する教員を配置するなどして児童を危険から回避させたり、危険を軽減したりする注意義務があり、これらの義務を怠った場合には過失があるというべきである。」

とした上で、

「教員Aらは、本件4段ピラミッドの最上位の児童であった原告が落下する可能性があることを前提に、原告に対し、危険を回避・軽減するための指導を十分に行うべき注意義務があった。

また、教員Aらは、3段目以下の児童が不安定な状況で、原告を立ち上がらせないように、本件4段ピラミッドの状況を十分把握して合図を出すべき注意義務があり、仮に3段目以下の児童が不安定な状況で合図が出されてしまった場合であっても、本件4段ピラミッドの近くに教員を配置して、本件4段ピラミッドの状況に応じ、3段目以下の児童が不安定な場合には、その段階で組立てを止めるよう指示すべき注意義務があった。そして、教員Aらは、原告が自ら落下を回避することができずに落下する事態に備えて、補助する教員を配置するなどして原告を危険から回避・軽減させる注意義務があった。

それにもかかわらず、教員Aらは、原告に対し、危険を回避・軽減するための指導を十分に行っていないうえに、教員Aは、本件4段ピラミッドの3段目以下の児童が不安定な状況にあったのに、これを把握しないまま漫然と合図を出し、また、教員Aらは、本件4段ピラミッドの状況を近くで把握し、合図にかかわらず組立てを止めるよう指示することのできる教員を本件4段ピラミッドの近くに配置せず、さらに、原告の落下に対して、補助する教員を本件4段ピラミッドの近くに配置していなかったのであるから、上記の注意義務を怠った過失があるというべきである。」

とし、さらに

「本件事故の際、教員Aが、本件4段ピラミッドの3段目以下の児童の不安定な状況を適確に把握して、合図を出すのを止め、あるいは、教員Aらが、本件4段ピラミッドの付近に教員を配置し、上記の状況を把握して組立てを途中で止めさせていれば、原告は、本件4段ピラミッドから転落することはなかったものと認められるし、教員Aらが、本件4段ピラミッドの付近に教員を配置していれば、落下する原告を受け止めたりすることによって、本件負傷を防ぐことができたものと認められる。」

として

「本件事故は、地方公共団体である被告の職員である教員Aらが、その職務を行うについて過失によって違法に原告に損害を生じさせたというべきであるから、被告は、原告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、本件事故による損害を賠償する責任を負う。」

と判断しました。

組体操事故に思うこと

運動会や体育祭などで行われる組体操ですが、児童・生徒の一体感や努力の結晶に感動するという、美談として取り上げられることが多いように思われます。

ただ、他方で、組体操では事故が頻発しているということをご存じでしょうか。

独立行政法人日本スポーツ振興センターが調査したところによると、2013年度に組体操中の事故で災害共済給付制度により医療費が支給された件数は、全国の小学校で6349件、中学校で1869件、高校で343件となっています。

2014年度、小中高における組体操事故確認事例は約8500件です。

2015年度では計8071件ですが、前年比で骨折事故が700件増となっています。

2016年での事故事例は計5271件となっています。

そして、事故によって被害を受ける児童・生徒についても、本件では最上段のケースですが、最下段の場合もあります。

しかも、いずれも重篤な結果を招いているのが実情です。

はたして、組体操は本当にやるべきなのでしょうか。

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