高校の体育大会の種目として採用した8段ピラミッドが崩壊して最下段の生徒が頚椎骨折等の傷害を負った事故

2019.02.01 学校行事

福岡地方裁判所平成5年5月11日判決

福岡高等裁判所平成6年12月22日判決

事案の概要

本件は、福岡県立高校において、平成2年度の体育大会の行事として8段の人間ピラミッドをすることになり、授業中にその練習をしていたところ、ピラミッドが崩れ、最下段にいた原告Xが第4頸椎骨折等の傷害を負ったため、指導に当たった教諭らに過失があったとして、原告Xが本件高校の設置者である被告福岡県に対し、国家賠償法1条1項の責任があるとして損害賠償を求めた事案です。

本件高校は、昭和61年に創立された福岡県立の高校であり、普通科に一般コースのほか体育、英語の各コースが設置され、体育コースは、体育の豊富な学習体験を通して心身ともに健全な人間の育成を図ることを目的とし、保健体育の授業中には一般コースと同じ保健等の授業のほかに各学年三単位のスポーツの授業が組まれ、さらに体育コースの生徒は運動部のいずれかに所属するものとされていました。

原告Xは、昭和63年4月に本件高校の体育コースに入学しました。

本件高校では、創立以来、例年9月の体育大会において、男子生徒による人間ピラミッドが実施されていました。

昭和61、同62年度は、体育コースの男子生徒が少なく、一般コースの生徒も含めてのものであり、5~6段で実施されましたが、昭和63年度には、体育コースから選抜された男子生徒によりタワーと6段のピラミッドが実施されて成功し、平成元年度には8段を目指しての練習がされましたが、成功せず、体育大会当日には、結局、7段に縮小して実施されたものの、1・2回目とも成功するには至りませんでした。

原告Xは、昭和63年度には一年生でしたが、ピラミッドに参加し、最下段の土台の役割を務め、二年生のときには体育大会の実行委員長として活躍するなど、体育コースのクラスのリーダー的存在でした。

平成2年7月頃、体育コースの担任のM教諭は、体育大会における赤ブロックの応援団長であった原告Xらを体育教官室に呼び、体育大会のピラミッドの規模について希望を聞いたところ、原告Xらは、前年の体育大会で7段を失敗していたこともあって、8段の実施を希望し、M教諭らも原告Xらの希望をそのまま受け入れて8段のピラミッドを実施することとし、原告Xらも交えてその人選をしました。

M教諭らは、その頃、H校長に対し、体育大会において8段ピラミッドを実施する旨の報告をしましたが、H校長も8段ピラミッドを実施することについて特に異議は述べませんでした。

9月4日、原告Xらは、体育コース担当のM教諭、S教諭ら4名の教諭の指導のもとに、1、2時限目の授業時間に体育館で組体操の練習をしました。

ピラミッドについては、上4段下4段の練習がされ、一斉に両手を伸ばしてつぶす練習もされ、教諭らは、体調の良くない生徒を入れ替えるなどし、また、「気合いを入れてやらねばならない。」あるいは「手を開いて置け。」などと注意していました。

9月5日、1時限目(午前8時50分から同9時40分)には、グラウンドで、「行進、かけ足」「列の増減」「列の開列、閉列」「方向変換」等の集団行動の練習がされ、2時限目(午前9時50分から同10時30分まで)に柔道場で組体操が実施されました。

まず2段や4段のタワーの練習がされ、原告Xもこれに参加しました。

次に午前10時10分頃からピラミッドの練習に移り、3段目、4段目までの練習が2回程度繰り返され、この合間に5段目から上の練習がされました。

さらに、午前10時20分頃からの練習において、4段目までの者が補助台から上がった後、5段目中央寄りの者がまず両脇から上がり、続いて両端の者が上がる途中、2~3段目の中心部分付近から揺れ始め、両脇付近はようやく持ちこたえましたが、中央部付近は原告Xに折り重なるように崩れるに至りました。

M教諭は、ピラミッドの前面に位置し、生徒らに「上がれ」等の合図をしており、S教諭他2名の教諭らも前面に立ってピラミッドの状況を見ており、揺れ始めるや4名の教諭らがそれぞれ前方から支えるなどし、また、補助台の者も後方から支えていましたが、崩落を始めると制止のしようがありませんでした。

上に折り重なっていた者が退いたときは、原告Xは、第4頸椎脱臼骨折、頸髄損傷の傷害により、手足が痺れて動けない状況でした。

裁判所の判断

第一審判決

原告Xの本件高校在学と被告の注意義務

裁判所は、

「国家賠償法1条1項の『公権力の行使』には、権力作用だけではなく、純粋な経済的作用を除く非権力作用も含まれるから、公立学校における教師の教育活動もこれに含まれると解するのが相当である。

しかるところ、本件高校の設置者である被告県は原告Xに本件高校への入学、在籍を許可していたのであるから、学校教育の際に生じ得る危険から同原告の生命、身体等を保護するために必要な措置をとるべき一般的な義務を負っているものと解される。」

とした上で、

「本件事故は、その教育の一環としての体育の授業の際に生じたものであるから、被告の責任の有無の判断に当たっては、その授業の内容、危険性、生徒の判断能力、事故発生の蓋然性や予測可能性、結果回避の可能性等を総合考慮し、その客観的な状況の下での具体的な注意義務の違反があったか否かが検討されなければならないということができる。」

と判断基準を示しました。

8段ピラミッドの採用について

被告は、

「一定の危険はスポーツに内在するものである上、ピラミッドは比較的安全なスポーツに属しており、本件のような事故の予見可能性自体がなく、M教諭らが体育大会の種目としてピラミッドを選択し、その練習を実施したのは原告Xらの申し出を採用したものであり、体育授業としての裁量の範囲内のものであって、これらの点の過失はない」

と主張しました。

この点について、裁判所は、

「確かに、本件高校の体育大会では、創立以来、毎年、ピラミッドが行われてきた上、ピラミッドは協同、協調の精神や一体感等を養うものであって、各種体育大会等でも行われ、比較的、その実施を原因とする事故の発生は聞かないものであり、また、学校教育法43条、106条、同法施行規則57条の2に基づき、公示された高等学校学習指導要領は、指導すべき『体育』の科目として『体操』『スポーツ』等を定めていることが認められるから、ピラミッドはこれらに類するものとして、当然に指導されるべき体育授業の一内容とも解され、さらに参加者らが共通の目的をもって行動、演技するのであるから、その限りにおいて、相手と対峙し、攻撃、防御の動作を繰り返し、これを内容とするラグビーや柔道等のスポーツとは異なる面があるということができる。」

としながらも、

「しかしながら、人間ピラミッドは単に人体の積重ねではなく、柔軟で、それ自体独立した構造の人体を各自が相互に均衡を保ちながら、総合的に一個と評価できる人間のピラミッドを完成させるものであり、参加者が多くなるに従って、高さ、人数等の点で下段の者らの負荷も大きくなり、また、中央に押す力も働いているため、四肢全体に相応な力を配分できず、またこれが上段、さらにはその左右の者らにも微妙に影響して揺れの原因となり、相互のバランスを失し、崩落しやすくなるのであって、完成させることはより困難になるものと認められる。」

「また、崩すときは、合図により参加者が一斉に両手両足を伸ばして崩すのであって、その場合は、上段の者の不自然な体勢の落下もなく、下段の者にかかる上段の者らの体重等の負荷は一定、均衡し、大きな傷害、事故の発生は考えられないものの、完成に至る途中で崩れ、落下するときは、落下する者が不自然な体勢となり、また、大規模であるときや、中央付近のみが先に崩れるなどの不自然な崩れ方をするときなどは、下段の一か所に集中して崩落、折り重なることになり、下段の者に過重な負荷がかかることになるのであるから、被告主張のように一概に安全なスポーツとは断じ難いというべきである。」

とし、

「これらの危険性に注目すれば、本件のような高さ5メートルにも及ぶ8段のピラミッドは、体育大会の種目として採用し、実施するに当たっては、指導に当たる教諭ら及び学校長は、内在するこれらの危険性に十分に留意すべきであったということができる。」

と判示しました。

そして、裁判所は、前年の体育大会において7段ピラミッドを失敗していたことなどから、原告XらがM教諭に対し、8段ピラミッドをやりたいとの回答をした点についても、

「また、生徒の自主性を養う見地からは、体育大会等の運営を生徒に任せ、教諭らはこれを監督するとの運営方法も考えられるが、本件高校では教諭らが主導の形で体育大会が実施されていたことが認められるのであるから、本件高校における8段ピラミッドの選択は安易にされたとの評価を免れないというべきである。」

と判断しました。

8段ピラミッド練習におけるM教諭らの指導について

裁判所は、8段ピラミッド練習の指導に当たったM教諭らに具体的な注意義務を怠った点があるかに関して、まず、

「本件事故時の状況を考察すると、原告Xは、ピラミッド最下段のほぼ中央に位置していたのであり、前記の崩落の状況のとおり、原告Xの上部に組んでいた者のみならず、その左右の者もその殆どが原告Xに折り重なったのであり、原告Xは、突然の崩落或いは過重な負荷により不自然な体勢となり、上からの荷重等によって頸椎を損傷するに至ったと推認することができ、本件事故は崩落により当然に生じ得る結果と認められる。」

としました。

この点について、被告は、

「M教諭らはピラミッドの指導経験等を有しており、その指導に当たっては、指導計画等を策定してこれを実施するなど、事故防止に努めていた」

と主張しました。

しかし、裁判所は、

「M教諭ら4名は、いずれも高校、大学時代に自らピラミッドに参加した経験はないか、あっても5、6段程度であり、殆どが本件高校赴任後での経験であって、ピラミッド参加の人員の選定、生徒らに対する注意等をみても、前記のほか『全体が壊れそうなときは、特に上の者について早く下りるように注意していた。』という程度であって、特にピラミッドについての高度の技術、指導力、経験を有していたとは認められない。」

として、被告の主張を排斥しました。

そして、裁判所は、

「本件事故は、M教諭らにおいて、8段ピラミッドが極めて成功が困難で、危険性のあることを十分に認識せず、これを安易に採用し、生徒らの危険回避の方法等を工夫することなく、また、ピラミッド組立てのための段階的な練習、指導をすることなく、一気に実践の組立てに入り、練習2日目で5段以上の高段を目指したことにより生じたものであり、指導に当たったM教諭らの注意義務の違反によるものであるから、被告県はこれにより原告らが被った損害を賠償する責任がある。」

と判示しました。

控訴審判決

控訴審裁判所も

「国家賠償法1条1項の『公権力の行使』には、権力作用だけでなく、純粋な経済的作用を除く非権力作用も含まれるので、公立学校における教師の教育指導活動もこれに含まれると解するのが相当であるところ、本件高校の設置者である控訴人は被控訴人Xに同高校への入学、在籍を許可していたのであるから、学校教育の場において生じ得る種々の危険から同被控訴人の生命、身体等を保護するために必要な措置をとるべき一般的な注意義務を負っているものというべきである。」

とした上で、

「本件事故は学校教育の一環としての体育の授業の際に生じたものであるから、控訴人の責任の有無を判断するに当たっては、その授業の内容、危険性、生徒の判断能力、事故発生の蓋然性や予見可能性、結果回避の可能性等を総合考慮し、その客観的な状況のもとでの具体的な注意義務の違反があったかどうかが検討されなければならない。」

と判断基準を示しました。

8段ピラミッドの採用について

控訴審裁判所は

「全ての体育実技の授業は必然的に一定の危険を内在させているのであるから、これを指導する教師等は、指導計画の立案策定から指導の終了に至るまで、当該授業にいかなる危険が存在するか的確に予見し、右予見に基づいて適切な事故回避のための措置をとることが要求されているというべきである。

しかして、人間ピラミッドは各種体育大会等において広く行われる種目であり、高等学校学習指導要領において指導すべき体育の科目として定められている体操の範疇に入る組体操として高等学校における体育授業の一内容と解することができるものの、一般的にみて、上部の者が前後左右へ転落する危険はもとより、上部の者ないしは中位の者がほぼ真下に崩落することにより下段の者がその下敷きになる危険を内包することを否定できない。

ことに参加者数が増えるに従って、高さ、人等の点で下段の者らの負荷は大きくなるばかりか、中央に押す力も強く働いて揺れを生じ、かつ、バランスを失して崩落しやすくなり、崩落が下段の一か所に集中し、その結果下段の者に過重な負荷がかかる危険があることは見易い道理である。

特に、本件のような高さ5メートルにも及ぶ8段のピラミッドは完成間際はもちろん、途中においても崩落する危険があることは当然であるが、この危険性は更に、参加者数のみならず参加生徒の個々的及び全体的な体力、筋力、精神力、集中力、協調力等の資質不全、習熟度の不足ないし指導者の未熟等の要因によって容易に増幅されるものであり、指導する教師らにこの危険性が予見できないことはありえない。」

として、

「したがって、8段のピラミッドを体育大会の種目として採用するに当たっては、参加生徒の資質、習熟度、過去の実績等について慎重な検討を必要とするものというべきである。」

としました。

そして、控訴審裁判所は、

「本件高校においては、これまで8段のピラミッドを成功させたことは一度もなく、前年の平成元年度の体育大会において7段を2度も失敗していたにもかかわらず、指導に当たる体育コース担任の教諭らは、被控訴人Xをはじめとする生徒らの希望をそのまま受け入れ、平成2年度においては7段を飛びこして一挙に8段ピラミッドを実施することとし、H校長も指導教諭らの意見に何ら疑問を呈することなくそのまま承認したものである。

しかもその際、指導教諭らにおいて、前年度の失敗の原因を分析研究し、その上での反省を踏まえたり、他の学校での実施例、成功例を調査するなどして、8段ピラミッドの構築に伴う崩落による事故発生について何らかの有効な事故防止対策を講じた形跡は全くないまま、目標段以外は前年度と殆ど変わらない練習計画をそのまま策定実施したものであって、本件高校の体育コース担任の指導教諭ら及び学校長には先ず第一に杜撰で無理な練習計画を安易かつ漫然と策定実施した過失があり、その結果本件事故が発生するに至ったとの非難を免れないのである。」

と判示しました。

この点について、控訴人は、

「M教諭らは人間ピラミッドについて充分な知識と指導経験を有しており、その日導計画の策定に遺漏はない旨及びピラミッドの目標は生徒の要望を容れて一応8段にしたものの必ずしもそれにこだわるものではなく、無理であればいつでも7段に切り替える予定であった」

と主張しました。

しかし、控訴審裁判所は、

「前者については、同教諭らが8段ピラミッドの構築に伴う崩落による事故発生について何らかの有効な防止対策を講ずることができるまでに充分な技術、指導、経験を有していたとは到底認められない以上、8段ピラミッドを目標とした練習計画の策定を敢えてした同教諭らの措置は無謀の譏りを免れることができないし、後者については、本件の場合、8段を目標とする練習計画に基ついて8段構築を目指して練習、指導している過程において事故が発生したのであるから、たとえ指導教諭において8段にこだわらず場合により目標を7段に切り替える予定であったとしても、当該練習計画の立案策定に注意義務違反の粗漏があることに消長を来たすことにはならない。」

として、控訴人の主張をいずれも排斥しました。

また、控訴人は、

「本件事故は5段が上がっているときに発生したから、その時点において指導教諭が認識していたかを前提として危険の予見可能性の有無を決めるべきである」

と主張して、8段を目標とする練習計画の策定に本件事故発生の予見可能性はなかったと強調しましたが、控訴審裁判所は、

「8段を目標とした5段と5段を目標とした5段の間には参加生徒数、ピラミッド構築のための所要時間、下段者に対する荷重のみならず参加生徒の心理的安定感、緊張度、全体的協調力のバランス等が自ずから異なり、引いては前者は後者より大きい崩壊の可能性と危険性を内蔵しているといわなければならず、8段ピラミッドがそれ自体前示のような危険性を内包する組体操である以上、8段を目標とする練習計画の策定と本件事故発生の予見可能性が無関係であるということはできない。」

として、この点の控訴人の主張も排斥しました。

人間ピラミッドの組み方指導について

控訴審裁判所は、

「被控訴人Xが受傷した直接の原因は組立て途中のピラミッドが突然崩落し、5、6段の中央部の生徒が集中的に同被控訴人の上に折り重なったため、同被控訴人は、過重な負荷に耐えかねて不自然な体勢を余儀なくされ、かつ、上からの荷重等により頸椎を損傷するに至ったものであると推認されるのであるが、右崩落の態様及び受傷の結果は崩落により当然生じうる性質、程度のものと認められる。」

とした上で、

「人間ピラミッドの組み方は、1、2段は時間をかけて安定的に組む必要がある反面3段以上は集中的に迅速に上る必要があるが、一定の時間内に所定のピラミッドを完成するためには参加生徒全員に対し練習の都度事前に所定の目標段数を明確に周知徹底させて筋力、バランスの集中配分に遺漏なきを期せしめることが大切であり、これが同時に崩落防止のために必要不可欠なことであって、指導教諭として先ず最初に心すべき指示事項でなければならない。

しかるに、M教諭は、事故発生当時、5段を目標とするピラミッドの完成を予定しながら5段目がほぼ完成した段階でにわかに方針を変え一気呵成に6段目以上の構築を指示したが、6段目以上については生徒に対し事前の明確な周知がされてなかったのであるから、その方針変更が1段目から6段目までの生徒の集中力と力配分に対し微妙な心理的影響を与えたであろうことは容易に推知できるところである。」

として、

「右指示に従って6段目の生徒が5段目の背中に手をかける位置まで登った直後に2、3段目から崩壊を生じたというのであるから、崩落による本件事故の発生は6段以上の目標段数を事前に明確に周知徹底させたうえで練習を開始すべきM教諭の注意義務違反に基因すると認めてもあながち不当な認定とはいえない。」

と判示しました。

ピラミッドの補助態勢についての注意義務について

控訴審裁判所は

「高段ピラミッドの崩壊態様は千差万別であるが、独り前後左右のみならず、本件事故発生時のように、中央部分の2、3段が上から下へ崩落することもありうるのであるから、M教諭ら4名は指導教諭として、多くの補助者を動員して中央中段部分に指示を与えることにより崩落の危険性を少しでも緩和する等の対策を講ずべき注意義務があるのにこれを怠り、前後の崩落の可能性のみに注意を奪われた結果、ピラミッドの前方に教諭4名、後方に補助台を兼ねた生徒12名の補助者を配置したのみで中央中段部分の支持のための補助態勢に全く意を用いず、そのため中央中段部分については崩落するにまかせたことにより本件事故が発生したことを認めることができる。」

と判示しました。

人間ピラミッドの崩れ方についての注意義務について

控訴審裁判所は、

「完成したピラミッドを合図により首を引き両手両足を伸ばし身体を真直ぐにして一斉につぶす場合は比較的安全であるが、これと異なり完成前の崩壊のまま放置すれば過重な負荷と不自然な姿勢の相乗作用により不測の事態が生ずるおそれがあるから、指導教諭としては、平素から完成前崩壊による事故の防止対策にも留意し、できるだけ完成後分解と同一の姿勢を保持するよう指導を徹底し、臨機応変の練習を段階的に繰り返し、その要領を全参加者に会得させるよう努めるべきはもちろんであるが、完成途中のピラミッド全体を見渡せる地点に補助者を配置する等して、崩れる気配を感じたら笛、太鼓等の合図により臨機応変にむしろわざと崩させる手段に訴えてでも、事故の発生を未然に防止すべき注意義務を負担しているといわなければならない。」

「もとよりピラミッドが本来完成を目指す組体操である以上未完成の崩落に備えて過度な注意義務を期待することは相当ではないが、前示のとおり、ピラミッドの途中崩壊が不可避な現象であり、かつ高い危険性を有する性質のものである以上、そして、意図的な分解によって事故の発生を防止又は軽減することが期待できる以上、体育コース担当の指導教諭として負担を免れない注意義務であるということができる。」

とした上で、

「しかるに、M教諭らは、平素から、崩れるときには上のものは素早く下りて退去せよ、崩落するものは補助者が支えよ、との指導はしていたが、それ以上に、平素から、特段の事故防止の指導に努めた形跡は窺えないし、本件事故発生に際しても、臨機応変に意図的な分解を敢えてしてても事故の発生を未然に防止等する方策にそもそも思い至らないばかりか、ピラミッド全体を見渡せる位置に補助者を配置することもなく、崩落のままにまかせてなす術を知らなかったものであって、本件事故はM教諭らの右注意義務違反の所為によって発生したといわなければならない。」

と判示しました。

結論

以上より、控訴審裁判所は、

「本件事故は本件高校のH校長を含むM教諭らの各種具体的注意義務違反の所為によって発生したものということができるから、控訴人はこれにより被控訴人らが被った損害を賠償する責任がある。」

と判断しました。

国連も問題視する組体操

国連の「子どもの権利条約」委員会が、傷害などからの保護を定めた同条約に違反しているとの指摘を受け、組体操を審査対象とするとの報道がありました。

実際に、全国の小学校・中学校だけでなく高校でも、組体操における事故が多発しています。

本件のような深刻な犠牲者を生み出す危険性を大いにはらんでいるにもかかわらず、組体操をやるメリットは本当にあるのでしょうか。

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