スキー場で発生した滑降者同士の接触事故についての最高裁判決

2018.11.10 スポーツ中の事故

最高裁判所第2小法廷平成7年3月10日判決

事案の概要

平成3年3月10日午後4時ころ、北海道虻田郡倶知安町所在のニセコ国際ひらふスキー場において、いずれもスキーで滑降していた上告人と被上告人が接触し、上告人が転倒して負傷する事故が発生しました。

本件事故当時、上告人は26歳の主婦、被上告人は大学生であり、いずれもスキーについては相当の経験を有し、技術は上級でした。

上告人は、スキー板を平行にそろえて滑降する方法(パラレル)で大きな弧を描きながら滑降していました。

一方、被上告人は、上告人の上方から同人よりも速い速度で、スキー板を平行にそろえて連続して小回りに回転して滑降する方法(ウェーデルン)とパラレルを織り交ぜて、小さな弧を描きながら滑降していました。

上告人は左に大きく弧を描きながら方向転換をして本件事故現場付近へ滑降し、被上告人は右に小さく弧を描いて方向転換をし、上告人と対向するようにして本件事故現場付近へ滑降していましたが、被上告人は、上告人が進路前方右側に現れるまで上告人に気づかなかったため、衝突を回避することができず、本件事故が発生しました。

本件事故現場は急斜面ではなく、当時は雪が降っていましたが、下方を見通すことはできました。

裁判所の判断

札幌高裁の判断

原審である札幌高等裁判所は、

「前記事実関係の下において、被上告人が本件事故発生前の時点で下方を滑降している上告人を発見し得た可能性は否定できない」

としながらも、

「被上告人が他の滑降者に危険が及ぶことを承知しながら暴走し又は危険な滑降をしていたとは認められない」

として、

「被上告人には本件事故の発生につき過失はなかった」

と判断し、上告人の請求を棄却すべきものとしました。

最高裁の判断

これに対して、最高裁判所は

「スキー場において上方から滑降する者は、前方を注視し、下方を滑降している者の動静に注意して、その者との接触ないし衝突を回避することができるように速度及び進路を選択して滑走すべき注意義務を負うものというべき」

とした上で、

「前記事実によれば、本件事故現場は急斜面ではなく、本件事故当時、下方を見通すことができたというのであるから、被上告人は、上告人との接触を避けるための措置を採り得る時間的余裕をもって、下方を滑降している上告人を発見することができ、本件事故を回避することができたというべきである。」

として、

「被上告人には前記注意義務を怠った過失があり、上告人が本件事故により被った損害を賠償する責任がある。」

と判断しました。

スキー場における接触事故についての重要な判断

この最高裁判決は、スキーヤーとしては当然に知っておくべきものといえます。

スキーの滑降については道路交通法のような法規は存在せず、ルールやマナーが存在しているにすぎません。

したがって、スキーヤー同士が接触事故を起こしたとしても、ルール違反やマナー違反などでしかないと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、この最高裁判決は、上方から滑走してくる者が前方注視義務や衝突回避義務を負っており、それに違反して接触事故を起こした場合には不法行為に基づく損害賠償義務を負うことになることを判示しました。

この最高裁判決以降、スキー場における接触事故については、上記の最高裁が示した義務に違反したか否かが判断されているケースが多くみられます。

また、スキーヤーだけでなく、スノーボードの場合であっても、およそスキー場における接触事故という点では同様だといえます。

「スキー場において上方から滑降する者は、前方を注視し、下方を滑降している者の動静に注意して、その者との接触ないし衝突を回避することができるように速度及び進路を選択して滑走すべき注意義務を負う」という点はくれぐれも覚えておいていただきたいと思います。

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