スキー場で滑走していた者が上方からスノーボードで滑走してきた者に衝突されて重傷を負った事故

2018.11.23 スポーツ中の事故

神戸地方裁判所平成17年8月16日判決

事案の概要

本件は、平成11年12月30日午後3時ころ、本件スキー場内の本件事故現場でスキーで滑降中の原告とその上方からスノーボードで滑走してきた被告とが衝突し、これにより原告が頚髄損傷等の傷害を負い、その後遺障害が生じたとして、原告が被告に対して、不法行為に基づく損害賠償を求めたという事案です。

原告は、高校の修学旅行のときに初めてスキーをし、その後スキーツアー(全日程5日間)に2〜3回程度参加したことがあり、本件事故当時は、パラレルで斜滑降はできるが、左右に転回するのはスキーを八の字に開くいわゆるボーゲンによる方法でしかできないという程度の技量でした。

被告は、本件事故の前年にも本件スキー場に来て、スノーボードでの滑走を行っていました。

原告は、友人とともに平成11年12月29日の夜、バスに乗って、本件スキー場周辺のホテルに同日の夜遅く到着し、翌30日は、朝食後スキー教室に入り、男性の指導員からスキーの指導を受けました。

スキー教室での指導を受けた後、原告は、男性指導員から「1度だけ一緒に滑ってあげましょう。」と言われ、これを承諾して、男性指導員と一緒に第2ペアリフトに乗り、到着した地点から、本件スキー場のパノラマコース内を男性指導員が先導して、S字を描くように滑降し、その跡をなぞるように原告が滑降しました。

このときの原告の滑降の仕方は、スキーを完全にそろえることはできず、多少スキーを八の字に開いて滑降し、ボーゲンで左右に転回していました。

なお、パノラマコースの平均斜度は15度でした。

原告がパノラマコース内をこのような方法で滑降し、本件事故現場付近にさしかかり、スキーを八の字に開いて左に転回しようとしたところ、原告の進行方向の左後方から被告がスノーボードで滑走してきて原告の後方より衝突しました。

これによって、原告は前方に転倒し、現場に来たパトロール隊員に抱えられて、救護センターに運ばれ、そこで寝かされた。

原告は、本件事故後直ちにA病院に入院し、頚髄損傷、頭部外傷第Ⅰ型、胸髄損傷(疑)、腰髄損傷(疑)及び左膝関節打撲と診断されました。

平成13年12月17日、原告には頚髄損傷による四肢麻痺、両上下肢機能に著しい障害があるとして、身体障害者等級表による級別を1級とする身体障害者手帳が交付されました。

裁判所の判断

裁判所は、

「スキー場において上方から滑走する者は、前方を注視し、下方を滑降している者の動静に注意して、その者との接触ないし衝突を回避することができるように速度及び進路を選択して滑走すべき注意義務を負う(最判平成7年3月10日判例タイムズ876号142頁以下)と解するのが相当である」

とした上で、

「本件事故現場付近は急斜面ではなく、原告は、スキーをやや開いて斜滑降をしており、原告の技量からして、さほど速度が出ていたとは考えられず、加えて、被告が原告に衝突した時点においては、原告はボーゲンで左に転回しようとしていたときであるから、原告の滑降する速度はかなり遅かったことが認められ、被告は、原告との接触を避けるための措置を採り得る時間的余裕をもって、下方を滑降している原告を発見することができ、本件事故を回避することができたというべきであるから、被告には前記注意義務を怠った過失があり、原告が本件事故により被った損害を賠償する責任がある。」

として、

「被告は、原告に対して、本件事故について、民法709条に基づく不法行為責任を負う。」

と判断しました。

これに対して、被告は、

「原告は,被告が滑降している前を一旦左から右に通過し,その後,目前で急に左に転回したので,このままのコースを滑降すれば原告と衝突すると考え,滑降するために左足にかけていた重心を右足に移動させ,それまでとは逆の方向にスノーボードを進行させ,原告の後方をすり抜けようとしたところ,原告の滑降していく速度が思いの外低速であったので,原告の左側面に衝突した。」

と供述して、原告が目前で急に左に転回したために衝突を避けることができなかったのであり、被告には過失がないと主張しました。

これに対して、裁判所は、

「原告の技量からして、斜滑降していた時の速度は、さほど早いものとは考えられず、さらに、原告は左転回するに際しては、ボーゲンという方法を取っているのであるから、原告が左に転回する際の速度はかなり低速であり、被告の目前で急に転回するという事態が発生するとは到底考えられない上、被告がスノーボードで滑降しているときに重心を移動させるということは一旦スノーボードはそれまで進行していた方向上で停止し、その後、別の方向に進行するはずであるから、被告の供述をもとにしても停止した時点ですでに衝突は避けられていたはずであり、そこから、再度進行した地点で原告と衝突することは想定できない。」

として、被告の主張は採用しませんでした。

スキー教室の生徒には細心の注意を

この裁判例は、スキーにおける注意義務の内容を示した最高裁判決を踏まえて判断されたものです。

スキー場で発生した滑降者同士の接触事故についての最高裁判決

この最高裁判例を踏まえると、本件における判決は妥当なものだといえます。

この裁判例からは、スキーやスノーボードに熟練している人ほど、初心者には注意すべきだということを理解していただきたいと思います。

私も高校時代に修学旅行でスキーを体験したのですが、初めは全く滑れませんでした。

徐々に慣れてきてそれなりに格好がつく程度のことはできるようになりはしましたが、それでも日頃からスキーを楽しんでいる方々とは雲泥の差です。

そして、そのような方々からすると、私のような初心者はどこにどのように滑ってくるのか、どこで止まれるのか、どこで転ぶのかなどについて予測ができないのではないかと思います。

しかし、そのような初心者に上方から衝突してしまうと、注意義務違反を問われることになります。

スキー教室や修学旅行生などといったスキーの初心者を見かけた場合には、細心の注意を心がけるようにしてください。

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