部活動における部員による不祥事を理由にした「部員の連帯責任」に思うこと

2019.12.12 弁護士コラム

最近、部活動における部員による不祥事を理由に、大会への出場を辞退する事案が多く見受けられました。

不祥事の内容を具体的に公表していないケースもありますので、どのような不祥事であったのかについて知る由はありません。

以前から、部員による不祥事を理由に大会への出場を辞退するという「部員の連帯責任」が問題視されてきました。

この点が争われた裁判例(東京地方裁判所平成14年1月28日判決)を紹介してみたいと思います。

事案の概要

本件は、平成11年当時本件高校のラグビー部に所属していた原告らが、平成8年に発生した同校ラグビー部員間の暴行事件に関して、同年9月29日に、東京都高等学校体育連盟に対し同校ラグビー部の公式戦の出場を1年間辞退するとの届出をしたことは、学校長及びラグビー部部長の裁量権を逸脱した不合理、不当な行為であり、これによりラグビー公式戦に出場するという法的利益を侵害されたなどとして、同校を設置する被告学校法人及び当時の教頭兼ラグビー部部長であった被告Pに対し、不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案です。

本件ラグビー部の2、3年生部員らは、平成8年7月ころから、1年生部員に対し、生意気であるとか騒いでいるなどの理由で、泣き出すまで殴る蹴るの暴行を加えるようになりました。

当時本件ラグビー部の監督をしていたU監督は、1年生部員の顔が殴られて赤くはれているのをみても、その理由を尋ねたりすることはありませんでした。

本件ラグビー部は、平成8年7月21日から同年8月1日まで、V温泉で合宿を行いましたが(V合宿)、その間、2年生部員のBは、A他1年生部員数名に対し、毎日のように一人ずつ殴ったり蹴ったりの暴力を振るいました。

U監督は、V合宿中に、3年生部員が1年生部員の腹部をスパイクで蹴るのを見ても、1年生部員がボールを忘れたからという理由を聞くと、蹴った者に対し何ら注意をしませんでした。

本件ラグビー部は、同年8月8日から同月15日まで、長野県Wで合宿を行いましたが(W合宿)、Bは、合宿中の昼休憩中に、A始め1年生部員数名に殴る蹴るの暴行をふるい、特に合宿終わりころには、Aを呼び出し、約10回殴打しました。

U監督は、練習中に、Bの暴行により、1年生部員のCが顔をはらしていたり、Aがふらついている様子をみても、何ら事情を尋ねませんでした。

Cの保護者は、同年8月21日ころ、U監督に電話をし、CがBに殴られ、頬骨にひびが入ったと告げました。

Aも、U監督に、合宿中に受けた暴力や嫌がらせについて報告をしました。

Aは、同年9月8日、Bからラグビー用のパンツを貸すよう言われて貸しましたが、同日の練習後も返してもらえず、12日になって、保護者を通じてBに連絡を取ったところ、翌13日、U監督から新しいラグビー用のパンツを渡され、「これで水に流せ」といわれました。

しかし、Aは、納得できず、U監督にこれを返還し、「自分のパンツを返してほしい」と申し入れたところ、U監督は、Aに対し、「そんなやつだとは思わなかった」「見損なった」と発言したため、Aは以後U監督のことを信頼することができなくなりました。

当時本件高校の教頭であった被告Pは、同年9月17日、Aの保護者から、「夏季V及びW合宿において上級生から1年生に対し、リンチ同様の暴力行為が再三に亘りあった。息子は恐怖心から登校することに躊躇している。……(中略)、ラグビー部顧問では最早、解決の期待はできない。最終的な学校としての対応を望みたい。」との申入れを受けました。

被告学校法人は、その申出を受け、他の生徒に対しても暴行があったとの申出を受けていたこともあって、直ちに被告Pにおいて、暴力行為の有無等について、本件ラグビー部の各部員から事情を聴取し、作文を書かせるなどして事実関係を調査しました。

その結果、A及びCに対する各暴行は2年生Bによるものであること、本件ラグビー部員は1年生のとき伝統的に上級生から暴行を受けていること、その他にも動作の緩慢な部員に対する暴行が半ば恒常的に行われてきたことを把握しました。

被告学校法人は、同年9月18日、直ちにU監督を更迭し、ラグビー部長に被告P、監督代行にXを充ててその体質改善を図るとともに、同月25日、Bを無期停学処分に付しました。

しかし、Aは、本件ラグビー部の練習などにおいて、上級生や同級生から「おまえがやめればよかったのに」などと悪口を言われ、また、無視されるなどの嫌がらせを受ける一方、Bの無期停学処分が従来の慣例に従って2週間後の10月6日に解かれたことから、被告学校法人に対し不信感を抱き、通学を拒否するようになりました。

こうした後の平成9年4月、原告X1及び同X2は、本件高校に入学し、同校ラグビー部に所属した。

Aは、平成10年7月30日、当庁に、B及び被告学校法人を被告とする訴訟を提起しました。

被告学校法人は、この訴訟事件における口頭弁論やAの本人尋問等を通じて、本件ラグビー部の下級生部員が恒常的に上級生部員から暴行を受けている実態があり、その暴行が先輩から継承されており、それは勝利至上主義に毒された短絡的指導に基づくものではないかと考えるようになりました。

この裁判が争われていた最中の平成11年4月、原告X3、同X4及び同X5は本件高校に入学し、同校ラグビー部に所属しました。

被告学校法人は、本件暴行等事件以降、本件ラグビー部内で暴力行為が発生しないよう、所属部員に対し、機会を捉えて適宜教え諭していました。

しかし、そのような中、平成11年4月、当時の2年生部員Y、原告X2他1名が、同年1月ころに1年生部員4名に対して暴行を加えていた事実を把握しました。

被告Pは、原告X2を始め加害者に対し説諭等を行いましたが、ここに至って、本件ラグビー部には伝統的な暴力体質があると見ざるを得ないと考えました。

被告Pは、S校長に対し、上記のとおり、本件ラグビー部には、暴力的体質があることを報告し、また、O理事長、S校長始め被告学校法人関係者に対しても、上記報告をするとともに、別件訴訟事件の経過及び見通しとともに、本件ラグビー部のこの体質を如何に改善すべきかを協議するようになりました。

その結果、本件ラグビー部の暴力体質を改善するには、生徒、OB、父母をもその対象として同時にショックを与える療法をとらざるを得ないであろうという結論に達しました。

そして、同年8月頃に至り、本件ラグビー部の体質を刷新するには、同年9月28日に言い渡される別件訴訟事件の判決が被告学校法人の敗訴判決となり、その内容も報道されるであろうことを機会に、1年間公式戦出場辞退という教育課程の変更を行うこと、他方で理事者、学校当局者も暴力行為を永年放置していた責任は免れ難いとして関係者の処分を行うことが検討さましれた。

そして同年9月中旬頃には、理事者、学校当局者に対する処分については、処分を受ける者の同意を得て、O理事長は減給30パーセント2か月、S校長は減給20パーセント2か月、被告Pは教頭から教諭へ降格、Z教頭は減給5パーセント2か月、U教諭は専任講師へ降格、J理事は減給10パーセント2か月等の処分を決め、同年10月4日開催予定の理事会に提案することになりました。

同年9月28日、別件訴訟事件において、Bの不法行為とともに、被告学校法人(その履行補助者であるU監督)に安全配慮義務違反があるとして、両名に対して連帯して金100万円を支払えとの判決を言い渡しました。

そこで、S校長は、同年9月29日、当初からの方針どおり、本件暴力等事件の判決言渡しを契機として、本件ラグビー部における暴力行為を根絶するため、教育課程の編成実施権の行使として、東京都高等学校体育連盟(東京都高体連)に対し、同年9月29日から平成12年度第80回全国高校ラグビーフットボール大会東京都予選出場までの1年間の公式戦の出場辞退を申し出ました。

東京都高体連が、上記本件高校の出場辞退届を受理した当時、東京都高体連、東京都教育委員会、東京都ラグビーフットボール協会が主催する第79回全国高等学校ラグビーフットボール大会東京都予選(いわゆる花園大会予選)が既に始まっており、本件高校はシード校として平成11年10月3日の試合に出場予定でした。

しかし、上記出場辞退届により、本件ラグビー部の第79回全国高等学校ラグビーフットボール大会東京都予選の欠場が確定し、原告らは同大会へ出場する機会を失いました。

裁判所の判断

本件の争点は、本件決定等が学校長の裁量を逸脱した違法なものかです。

まず、裁判所は、

「学校教育法43条、51条、28条3項、同法施行規則57条、57条の2等に照らすと、学校長は、学校教育法に基づき教育課程を編成し執行する権限ないしクラブ活動における具体的活動に対して権限を有するのであって、これらは、教育的見地からの学校長の裁量事項ということができる。」

とした上で、

「そうだとすると、クラブ活動の一つである本件ラグビー部の具体的活動に対し、S校長は権限を行使することができ、本件決定等は、まさにS校長の権限行使に当たる」

とし、

「問題は、本件決定等に社会通念上合理性を欠く点があるか否かという点にある。」

としました。

そして、裁判所は、まず、本件決定等の内容の合理性について

「本件決定等は本件ラグビー部の暴力的体質を改善する目的でなされたものであり、その目的には合理性があるといえる。」

と判示しました。

この点に関し、原告らは、

「別件訴訟事件の暴行事件は本件決定等の3年前の出来事であり、これを事件に関係のない原告らに不利益を強いる本件決定等の内容は不合理である」

と主張しました。

しかし、裁判所は

「本件決定等は、別件訴訟事件の結果(判決)のみを前提としたものではなく、本件暴行等事件後の調査により発覚した本件ラグビー部員間による継続的な暴力行為の存在と、平成11年1月に発生した本件ラグビー部員間の暴力行為といった経緯を踏まえて、検討され、決定されたものであって、合理性のあるものと解するのが相当である。」

として、原告らの主張を排斥しました。

さらに、裁判所は、本件決定等が、公式戦辞退の期間を1年間としている点についても、

「本決定等があくまで教育的手段の一つであり、実施の一方法であることからすれば、固定的に捉えるべきではないこと(実際には半年の出場停止に止まっている)に照らすと、長すぎて合理性を欠いているとまではいえない。」

として、

「本件決定等の内容は、社会通念上合理性を欠いているとはいい難い。」

と判示しました。

次に、本件決定等の手続上の問題について、裁判所は

「確かに、本件決定等については、本件ラグビー部員及びその父兄等に事前に説明することなく行われたことが認められる。」

としながらも、

「しかし、そもそも、本件決定等は、学校長の学校教育法に基づく教育課程を編成、執行する権限の行使としてされたものであり、本来、父兄等に事前に説明する必要のない事項である。」

「のみならず、S校長は、本件決定等をするに当たり、前記のとおりO理事長、J理事、被告P、Z教頭と協議し、これらの意見を聴取した上で決定したものであり、手続上何ら問題は認められない。」

と判示しました。

その結果、裁判所は、

「本件決定等は、内容面、手続面、いずれの観点からも社会通念上合理性を欠いているとはいえない。」

と結論づけました。

部活動における連帯責任については「反対」である

本件では「部員の連帯責任」という判断を肯定する結論となっています。

法的な判断としては、校長の裁量権を逸脱したものといえない以上違法とはいえないという点で、妥当な結論といえるかもしれません。

しかし、問題となる不祥事にはいろいろなものがありますが、不祥事を起こしたのが部員全員とは限りません。

不祥事自体を全く知らない部員も当然います。

また、本件での不祥事は部活動内による暴力ですが、暴行行為には加害者だけでなく、被害者も存在します。

このような立場の部員が加害者と一緒に連帯責任を負わされなければならない理由はありません。

不祥事を起こした部員がいるのであれば、その部員を大会の出場メンバーから外すという措置もできるはずなのです。

また、もっというならば、そもそも不祥事が発生しないように、不祥事が常態化しないようにするのが、学校側の責任であると考えられます(本件では、実際に学校側の責任を認めたからこそ、別件訴訟で損害賠償責任が認められています)。

本件では「本件ラグビー部の暴力体質を改善するには、生徒、OB、父母をもその対象として同時にショックを与える療法をとらざるを得ないであろうという結論に達した。」ということですが、このような解決策しか思いつかないということ自体、非常に残念でなりません。

私は、部員による不祥事を理由に全部員に対し連帯責任をとらせるということには、反対です。

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