スポーツ事故に関する損害賠償請求の概要

2018.10.06 弁護士コラム

スポーツ中の事故によりけがをしたり、重い後遺症が残ったり、時には死亡という悲しい結果を招くことがあります。

この場合に、誰が、誰に対して、どのような根拠に基づき、どのような損害の賠償を請求することができるのかをまとめてみたいと思います。

スポーツ事故とは

スポーツに関わる加害者が被害者である個人に傷害を負わせた場合、または死亡させた場合をいいます。

被害者

被害者となる個人には、スポーツをしていた選手や生徒だけとは限りません。

スポーツに関わっていない個人も含みます。

実際に裁判例で問題となった事故としては

  • 学校の校庭で小学生が蹴ったボールが校庭の外に出てしまい、偶然バイクで通りかかった運転者が飛び出したボールを避けようとして転倒し死亡したケース
  • プロ野球の試合を観戦中、打者が打ったファウルボールが顔に当たってけがをしたケース

などがあります。

加害者

加害者となるのは、選手や監督・コーチなどの個人だけでなく、自治体や法人・団体も含まれます。

損害賠償請求の法律上の根拠

不法行為責任

一般に、スポーツ事故については、民法709条などの不法行為責任が問題となり、その要件を満たす場合には、加害者には損害賠償責任が発生することになります。

加害者がどのような立場であるかによって、その責任の法的根拠が異なることになります。

その例を挙げれば以下のとおりです。

  • 選手本人や指導者が加害当事者である場合-不法行為責任(民法709条)
  • 加害当事者が子供などの責任無能力である場合には、その子供の両親-監督者責任(民法714条)
  • 加害当事者(選手・指導者)との間で使用関係がある場合の使用者-使用者責任(民法715条)
  • 指導者が公務員である場合の国・地方公共団体-国家賠償責任(国家賠償法1条1項)
  • 大会主催者と加害当事者との間で使用関係がある場合の大会主催者-使用者責任(民法715条)
  • 施設の瑕疵が要因で事故が生じた場合の施設の占有者・所有者-工作物責任(民法717条)
  • 施設が「公の営造物」である場合の国・地方公共団体-営造物責任(国家賠償法2条1項)
  • スポーツ用具が原因で事故が生じた場合の用具の製造業者・加工業者・輸入業者-製造物責任(製造物責任法3条)

債務不履行責任

加害者と被害者との間に何らかの契約関係があり、加害者に安全配慮義務違反等が認められる場合には、加害者には民法415条の債務不履行責任が発生することになります。

例えば、選手が生徒や学生である場合には在学契約が、民間のスポーツチームやスポーツジムなどであれば入会契約が締結されています。

このような場合に、生徒や選手が熱中症により重い後遺症を負ったり、死亡したりする事故が発生することがあります。

このような場合、対戦相手だけでなく、顧問教員や監督・コーチによる何らかの違法行為によって結果が発生したわけではありません。

しかし、在学契約や入会契約においては、契約当事者(公立であれば自治体、私立であれば学校法人やチームの経営者など)には、契約に付随して、生徒や選手の安全に配慮するべき義務があります。

この安全配慮義務に違反したことにより生徒や選手が熱中症を発症した、あるいは迅速な対応を怠ったことにより重い結果を招いたと認められるケースがあります。

このような場合には、不法行為責任に加えて、安全配慮義務違反による債務不履行責任も問うことになります。

損害の内容

スポーツ事故による損害としては、人の生命・身体に損害を与える「人身損害」が一般的です。

人身損害には、「財産的損害」と「精神的損害」とがあります。

財産的損害

財産的損害はさらに「積極損害」と「消極損害」に区別されます。

積極損害

積極損害とは、スポーツ事故に遭ったことによって被った財産的支出を損害として扱うというものです。

実費弁償的な性質を有しています。

この積極損害にはさまざまなものがありますが、代表的なものは以下のとおりです。

診療費・治療費

スポーツ事故に遭った場合にまず必要となる支出は医師による診療・治療のための費用です。

入院費などが必要となる場合もあります。

この診療費・治療費・入院費用等は積極損害に当たります。

付添看護費

スポーツ事故で受傷した場合、入院や通院をしなければならないことがありますが、この場合、傷害の程度や被害者の年齢等によっては誰かに付添をしてもらわなければならないということもあります。

この場合の付添看護費は積極損害として認められています。

入院雑費

入院をするといろいろな雑費がかかります。

この入院雑費も積極損害として認められます。

通院交通費

通院のための交通費も積極損害として認められています。

この通院交通費は、基本的には公共交通機関の利用金額ですが、例外的にタクシー料金が認められる場合もあります。

自家用車で通院した場合には、ガソリン代が通院交通費として認められます。

通勤・通学付添費

入院や通院における付添看護とは別に、傷害の程度や被害者の年齢等によっては通勤や通学に誰かが付き添わなければならないということもあり得ます。

この場合の通勤・通学のための付添費が積極損害として認められる場合があります。

装具・器具等の購入費

スポーツ事故によって傷害を負ったり後遺障害が残ったという場合、各種の装具や器具を付けることを余儀なくされることがあります。

この装具・器具の購入費も積極損害として認められています。

代表的なものとしては、義歯・義眼・義手・義足・人工カツラ等の装具、車いすや松葉杖、メガネ・コンタクトレンズ、歩行補助器,頸椎装具(いわゆるコルセット)などがあります。

また、介護用ベッド・折り畳み式スロープ・人工呼吸器などの介護用品があります。

自宅の改造費・自動車の購入費等

後遺障害が残ったという場合、その後遺障害の内容や程度によっては、自宅をリフォームしたり、障害者用の自動車を購入しなければならないという場合があります。

この場合の自宅の改造費や自動車の購入費などが積極損害として認められることがあります。

葬儀費用

死亡事故の場合には葬儀費用の支出を余儀なくされます。

これも積極損害に当たるものとされています。

損害賠償手続費用

スポーツ事故による損害賠償請求をするために、各種の書類を取寄せるために費用を支払ったり、手続費用を支払ったりする場合があります。

これらの損害賠償請求手続に関連する費用は積極損害として認められる場合があります。

具体的には、診断書の作成手数料、医療記録の照会手数料、医師による鑑定書の作成手数料などが挙げられます。

弁護士費用

スポーツ事故による損害賠償請求は非常に専門的な内容を含んでいます。

そのため、弁護士に依頼して損害賠償請求を行うということがあります。

この弁護士費用も積極損害に当たるものとされています。

もっとも、弁護士費用については、示談交渉や裁判上の和解の際には計上されず、裁判所による判決が言い渡される際に被害者の請求認容額の1割程度が認められるというのが一般的です。

消極損害

消極損害とは、スポーツ事故に遭わなければ得られたはずの収入や利益をスポーツ事故によって失ってしまった場合に、そのスポーツ事故に遭ったことによって失った収入や利益を「損害」として扱うというものです。

この消極損害には大きく分けて2つの類型があります。

休業損害

スポーツ事故に遭い受傷した場合には休業を余儀なくされる場合があります。

それにより、その事業や仕事を休業しなければもらえたはずの収入を得られなくなります。

このスポーツ事故に遭わなければ得られたはずの休業中の収入や利益を「休業損害」といいます。

死亡事故の場合には、スポーツ事故から死亡に至るまでの間に休業期間があれば休業損害を請求することが可能ですが、即死事案のような場合には,休業期間なく死亡に至っているため休業損害は発生しないことになります。

逸失利益

逸失利益とは、スポーツ事故によって失われた将来得られたはずであろう利益のことをいいます。

逸失利益が問題となるのは、後遺障害が残った場合と死亡事故の場合です。

スポーツ事故により負傷した場合でも完治した場合には逸失利益は発生しません。

精神的損害

精神的損害とは、精神的な苦痛を被ったということを損害としてみるというものです。

この精神的損害に対する賠償金のことを「慰謝料」といいます。

民法710条は

「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」

と規定しており、財産以外の損害についても賠償責任がある旨を定めています。

この民法710条により精神的損害(慰謝料)を請求することができます。

具体的には、①傷害慰謝料、②後遺障害傷害慰謝料、③死亡による慰謝料があります。

最後に

スポーツ中の事故に関する損害賠償を請求するにあたっては、どのような状況により事故が発生したのか、それによりどのようなけがをしたのか、どのような後遺症が残ってしまったのか等の事情を具体的かつ詳細にお尋ねすることになります。

その上で、誰に対して、どのような法律構成により、どのような損害についての賠償を請求するのかを十分に検討することになります。

相談者の中には、損害賠償を請求したい相手を決めているケースもありますが、何度も詳細に聞き取りを行うことにより、別の相手も加害者とするべきと判断することはよくあります。

必要なのは、しっかりと打ち合わせをして意見交換を行い、しっかり理解していただいたうえで、納得の上で損害賠償を請求するか否かを決めることです。

遠慮することなくご相談いただければと思います。

Contact

お問合わせ

お電話でのお問い合わせはこちら

092-409-9367

受付 9:30~18:00 (月〜金)
定休日 土日祝

フォームでのお問い合わせはこちら

Contact Us

Top