海上でサーフボードに座って波待ちをしていた原告とウインドサーフィンで疾走してきた被告とが衝突した事件

2018.12.03 スポーツ中の事故

大阪地方裁判所平成9年6月13日判決

事案の概要

本件は、海上でサーフボードに座って波待ちをしていた原告が、被告のウインドサーフィンに衝突され、左側上顎骨骨折、左口部裂傷等の傷害を負ったとして、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案です。

原告は、平成3年3月に福岡県内の大学を卒業し、以後1年間は定職につかずに在学中に始めたサーフィンをして過ごし、その後平成4年4月から大阪府内の繊維問屋に就職しましたが、1年後の平成5年3月に退職し、同年4月から、同年10月に開催予定のサーフィン大会に出場するため、福岡市東区の三苫海岸先の海上において再度サーフィンの練習をするようになりました。

本件事故が発生した三苫海岸は、玄海灘と福岡湾とを画する砂洲状の半島の玄海灘側に面する遠浅の砂浜であり、適度な波風があることから、サーフィン及びウインドサーフィンのいずれにも適した場所です。

本件海上付近では、サーファーは、岸に近い場所で、ウインドサーファーは、さらに沖合で遊戯することが比較的多かったのですが、サーフィンとウインドサーフィンの遊戯区域が明確に区分けされていたわけではなく、現にウインドサーファーが岸に近いところで遊戯をすることもあり、特にファンボードと呼ばれるやや小型で波乗りを楽しむことをも目的とするウインドサーフィンの場合には、サーファーが遊戯をしている場所と同じ区域で遊戯することがあり、そのために双方の間で紛争が生じることもありました。

原告は、平成5年10月8日午前11時ころ、本件海上の岸から約50メートル沖合において、サーフボードにまたがった状態で、沖の方を向いて波待ちしていました。

なお、本件現場付近には、原告のほかにも、波に乗ったり、波待ちをしていたサーファーが多数いました。

当日は、北東の風が風速約12ないし15メートルで吹いており、波は腰から胸あたりの高さでした。

被告は、4.6メートルのマストのついたファンボードというウインドサーフィンに乗って、沖から岸に帰ろうとしていました。

その際、被告は、沖の方へ向かう時に、サーファーがいることを確認していたため、当日は北東の風で、ウインドサーフィンを風上方向に進行させることが困難ということもあり、サーファーのいない数十メートル南側を進行しました。

そして、被告は、本件現場付近にさしかかった時に、波間にサーファーがいるのに気付き、これを避けようとして急遽風下の方向へ進路を変更したところ、沖の方を向いて波待ちをしていた原告と衝突し、その際、被告のウインドサーフィンのボードの先端が原告の左口に当たりました。

裁判所の判断

被告の過失

裁判所は、被告の過失について

「本件現場付近は比較的海岸に近く、多数のサーファーの存在が予想される区域であるから、ウインドサーフィンの遊戯者である被告は、ウインドサーフィンの急制動が困難という特質を考慮の上、サーファーと衝突しないよう、サーファーの有無を十分に確認し、サーファーが存在しない場所を進行すべきであったのにこれを怠り、沖の方へ向かう時に確認したサーファーの位置を前提に、もはや南側にはサーファーはいないものと考え、特段の注意を払うこともなく、漫然とウインドサーフィンを進行させた過失により本件事故を起こしたものであるから、被告には大きな過失があったといえる。」

として、

「被告は民法709条に基づき、本件事故により原告に生じた損害を賠償する義務を負う。」

と判断しました。

原告の過失

他方で、裁判所は、原告の過失について

「本件現場付近には、本件事故以前からウインドサーフィンが進入してくることがあり、原告自身、以前からウインドサーフィンとの衝突の危険性を感じていたというのであるから、原告も波待ちの際にはウインドサーフィンの動向に十分注意すべきであったというべきである。」

とした上で、

「本件においては、被告のウインドサーフィンは、原告の前方から接近しており、当日の波のうねり等の事情を考慮したとしても、被告のウインドサーフィンには4.6メートルのマストがついていたことからすれば、原告は、より早期に被告のウインドサーフィンの接近に気付き、危機を回避することも不可能ではなかったと考えられるのに、実際には、本件事故の2、3秒前に初めて被告のウインドサーフィンに気付いたというのであるから、原告にも前方不注意の過失があったといわざるを得ない。」

として、原告の過失も認めました。

そして、裁判所は、過失割合について、

「過失相殺を行うのが相当であるが、原告の過失割合は、本件事故の態様、ウインドサーフィンとサーフィンの機動性等、その特性の差異、双方の過失の内容等を考慮すると、1割5分と認めるのが相当である。」

と判断しました。

サーファー同士の衝突による事故は非常に多い

2020年の東京オリンピックでも正式競技として採用されたことからも明らかなように、サーフィンは非常に人気のあるスポーツです。

年々スポーツ人口も増えてきているようです。

と同時に、サーファー同士の衝突事故も増加しているものと考えられます。

サーフィンには、「ワンマン・ワンウェイブ」つまり「一つの波に乗っていいのは一人まで」という暗黙のルールが存在します。

正確に言うと、波のピーク(ブレイクする側)に近い人に優先権があり、左右にブレイクする波の場合は、左右それぞれに一人ずつ波に乗ることができます。

また、既にテイクオフして波に乗っている人がいるのに、そのサーファーの進行方向のポジションでテイクオフする「前乗り(ドロップイン)」もルールとして禁止されています。

これらの行為は、サーファー同士の衝突事故を防ぐためのものです。

しかし、サーフィンを楽しみたいがために、周囲のサーファーに注意することなく、これらのルールを無視しているケースが後を絶ちません。

これらの行為は非常に危険であり、衝突した相手だけでなく、自分自身にとっても深刻な結果を招きかねない行為です。

サーフィンを愛する者同士がお互いにルールを守ることによって衝突事故を未然に防ぎ、サーフィンを楽しんでいただければと思います。

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