法定相続人以外にも財産をあげたい場合の手段。遺贈とは何か

2018.10.06 弁護士コラム

遺贈とは、被相続人が遺言によって無償で自己の財産を他人に与える処分行為(民法964条)をいいます。

物権・債権の移転、使用収益権・担保権の設定、債務の免除なども遺贈の対象です。

遺贈は、死因贈与と類似しますが、契約ではなく、無償の単独行為です。

しかも、遺言の中で行われることから、要式行為でもあります。

遺贈の当事者

遺贈者

遺贈をした被相続人です。

遺贈義務者

遺贈に伴う手続・行為(目的物の引き渡し)を実行すべき義務を負う者であり、この場合の遺贈義務者は相続人です。

遺贈の対象に不動産が含まれているときの遺贈の登記は、登記権利者である受遺者と登記義務者との共同申請によることになります。

遺贈による登記においては、登記義務者たる地位に立つ者が必要です。

受遺者

遺贈によって相続財産を与えられた者です。

自然人に限らず、法人でもよいとされています。

受遺者は、遺言の効力が発生した時点で生存又は存在しているのでなければなりません(民法994条1項)。

受遺者が遺言の効力が発生する以前に死亡したとき(同時死亡の場合も含む)は、遺贈は無効となります(民法994条1項)。

遺贈の種類

特定遺贈

包括遺贈

条件付遺贈

停止条件や解除条件などの条件を付した遺贈。

遺言には条件を付けることができますので、遺贈にも停止条件や解除条件をつけることができます。

期限付遺贈

始期付きの遺贈や終期を定めた遺贈。

補充遺贈

例えば、被相続人Aが甲地をBに譲るが、Bが断ったときはCに譲るという趣旨の遺言など、受遺者Bが遺贈を放棄したら、この者に遺贈する予定であった財産を別の者Cに遺贈するという内容の遺贈。

後継遺贈

例えば、被相続人Aが妻に全不動産を遺贈し、妻が死亡した場合に、なお、生存する不動産を長男Bに移転する趣旨の遺言など、受遺者Wの受ける遺贈利益を、ある条件の成就または期限の到来によってBに移転させるという内容の遺贈。

裾分け遺贈

受遺者Bは、その受ける財産上の利益の一部を割いてCに与えよという内容の遺贈。

負担付遺贈

受遺者に一定の行為を負担させることを内容とした遺贈。

負担の内容は、遺贈させる対象とは関係がなくてもよいとされています。

負担が履行されることによって利益を受ける者(受益者)は、相続人であってもよいし、第三者であってもよいとされています。

負担の額が遺贈される対象の価額を上回るときには、受遺者は、その対象の価額を上限として負担の履行義務が生じます(民法1002条1項)。

受遺者が負担を履行しない場合、相続人は、相当の期間を定めて催告をし、その期間が徒過したときに、遺贈の取消しを家庭裁判所に請求することができます。

特定遺贈と包括遺贈

特定遺贈

遺言者の有する特定の財産を具体的に特定して無償で与えるものです。

権利のみが受遺者に与えられます。

対象財産は遺産分割の対象から除かれます。

包括遺贈

意義

遺言者が財産の全部または一部を一定の割合で示して遺贈することをいいます。

種類

全部包括遺贈

積極・消極の財産を包括する相続財産の全部を受遺者に取得させようとする遺贈であり、被相続人に属した権利のみならず義務を含めて遺産の100%が受遺者に承継されます。

割合的包括遺贈

Aに全遺産の5分の2を、Bに5分の2を、Cに5分の1をそれぞれ遺贈する旨の分数的割合による包括遺贈です。

効果

遺贈された遺産全部(または遺産の一定割合)は、相続人の一身に専属するものを除き、遺贈の効力発生と同時に当然に、権利も義務も含めて包括的に受遺者に移転します。すなわち、包括遺贈がなされると、包括遺贈を受けた受遺者は、相続人たる地位の主要部分である財産相続権(被相続人が負っていた債務などの消極財産を含む)を取得するので、新たに受遺分の相続人が現れたという関係になります。

全部包括遺贈が第三者になされた場合は、本来相続人であったものは遺産を取得することができなくなりますから、結果として、本来相続人であった者が相続から排除されます。他方、割合的包括遺贈が第三者になされた場合は、受遺者は、あたかも受遺された割合の相続分を有する相続人と同様の立場で遺産分割などの相続権をめぐる紛争に当事者として関与します。

全部包括遺贈では、すべての遺産が遺産分割の対象から外されます。

包括受遺者は、相続人と同様に、遺贈を放棄したり、単純承認したり、限定承認したりすることができます。相続の放棄・承認に関する規律によって処理されます。

遺産分割・相続分の持戻しについても、包括受遺者は相続人と同様に扱われます。

包括遺贈についても遺留分減殺請求の対象となります。

包括遺贈の場合に遺贈される財産中に不動産が含まれているとき、遺贈による登記は共同申請になります。

包括受遺者と相続人との違い

法人は、相続人にはなれませんが、包括受遺者にはなれます。

包括受遺者には、代襲制度はありません(民法994条1項参照)。遺贈の効力が発生する前に受遺者が死亡した場合は、これにより遺贈は効力を失います。

包括受遺者に遺留分はありません。

割合的包括遺贈の場合、受遺分は固定されます。他の共同相続人や他の包括受遺者の放棄があったとき、放棄された分は別の相続人の相続分に加えられますが、受遺分は増加しません。

遺贈の効果

権利変動の効果が生じる時期

特定物の遺贈

遺言は、遺言者の死亡の時から効力を生じます(民法985条1項)ので、遺贈もその効力を生じ、遺贈の目的物に関する権利義務が遺言者から受遺者に承継されます。

判例は、

「遺贈の対象となる権利は遺贈の効力発生と同時に当然に受遺者に移転する」

と判示しています。

債権の遺贈

遺贈の効力を生ずると同時に、受遺者は債権と取り立てることができます。

不特定物の遺贈

遺贈の効力が生じた時点では、所有権は移転しません。

所有権が移転するためには、対象を特定するという遺贈義務者の行為が必要です。

農地の遺贈

都道府県知事の許可があって所有権移転の効果が生じます。

遺贈による権利変動と対抗要件

遺贈の効力が発生して目的物の所有権が受遺者に移転したとしても、受遺者が物権変動の事実を第三者に対抗するためには、遺贈による物権変動につき対抗要件が具備されていなければなりません。

ただし、遺言で特定遺贈につき遺言執行者が選任されている場合は、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできません(民法1013条)ので、民法1013条に違反して行われた相続人による処分行為は絶対的無効です。

遺贈と寄与分との関係

被相続人が遺贈した場合には、寄与分は、相続財産から遺贈の額を控除した残額を超えることはできません(民法904条の2第3項)。

寄与分制度は、被相続人の意思に反しない限りでの寄与の保障にすぎません。

遺贈の放棄

特定遺贈の放棄

特定遺贈の受遺者は、いつでも、遺贈を放棄することができます(民法986条1項)。

遺贈の放棄の時期に制限はありません。

特定遺贈の放棄は、相手方(遺贈義務者または遺言執行者)に対する意思表示により行われ、家庭裁判所での申述を必要としません。

特定遺贈の放棄は、遺言者が死亡した時点までさかのぼって効力を生じます(民法986条2項)。

したがって、特定遺贈により、受遺者に移転した所有権は、その放棄の結果、所有権の移転は最初から生じなかったことになります。

包括遺贈の放棄

包括遺贈については、受遺者は相続の放棄・承認に関する規定(熟慮期間、家庭裁判所での申述、放棄の遡及効、法定単純承認の規律)が適用されます。

効果

遺贈の対象となっていた財産に関して、遺贈が失効します。

遺贈を放棄したからといって、相続人としての地位までをも放棄することにはなりません。

遺贈の効力が発生した後、受遺者が遺贈の承認または放棄の意思表示をすることなく死亡したとき、原則として(遺言者が別段の意思を遺言中で表示していない限り)受遺者の相続人に承継されます。

遺贈の承認・放棄の撤回不可能

いったん行われた遺贈の承認や放棄の意思表示は、撤回することができません(民法989条1項)。

しかし、能力制限、詐欺・強迫を理由として承認・放棄の意思表示を取り消すことはできます(民法989条2項・919条2項準用)。

遺贈の無効・失効後の対象財産の帰趨

遺贈の放棄によって失効した場合において、受遺者が受けるべきであった財産は、遺言者が別段の意思を遺言中で表示していた場合を除き、相続人に帰属します(民法995条)。

遺贈の無効・取消

法律行為一般の無効・取消事由

遺贈は、法律行為ですので、法律行為一般の無効・取消事由が妥当します。

遺言の無効・取消事由

遺贈は、遺言により行われるものですので、方式違反の遺言に記載された遺贈は無効です。

遺贈に特有の無効事由

  • 遺言者が死亡する以前(同時死亡の場合を含む)に、受遺者が死亡した場合(民法944条1項)
  • 停止条件付遺贈で、条件成就する前に受遺者が死亡した場合(別段の意思表示がされていない場合(民法994条2項))
  • 遺贈の目的物が、遺言者の死亡時点で、相続財産に属していなかった場合(民法996条)

遺贈の無効・失効後の対象財産の帰趨

遺贈が無効となった場合において、受遺者が受けるべきであった財産は、遺言者が別段の意思を遺言中で表示していた場合を除き、相続人に帰属します(民法995条)。

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