体育祭の最中に発生した落雷事故により後遺障害が発生した事故

2018.11.12 学校行事 熱中症・自然災害

福岡地方裁判所小倉支部平成23年12月20日判決

事案の概要

本件は、福岡県立A高校に通学していた原告が、体育祭の最中に地面を通じて落雷に感電したために、後遺障害を生じたとした上、その事故が起きたのは、当該高等学校の教員の職務上の過失が原因であると主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づいて、損害賠償を求めた事案です。

平成17年9月10日、A高校のグラウンドにおいて、本件体育祭を開催することにしました。

当日の朝は曇天でしたが、A高校の所在地を含む筑豊地方では、前日の午後4時47分から雷注意報が発令されていました。

昼食時間後に雨が降り始め、徐々に雨足が強くなり、土砂降りになっていきました。

そこで、A高校は、本件体育祭の進行を早めるため、その後に予定されていた競技種目のうち綱引き及び騎馬戦を省略することにし、体育コース集団演技(女)が行われました。

この演技の開始時から雨は土砂降りであり、また、演技者であった女子生徒は全員裸足でした。

この演技の終了直後、雷鳴が聞こえました。

そこで、A高校教員は、体育祭を一時中断することにし、生徒に対して、体育館に避難するよう指示をしました。

中断後30分程度経過した午後2時7分ころまでに、雨は徐々に小降りになり、雷鳴も聞こえなくなりました。

A高校教員は、3年生の生徒や観戦に来ていた保護者からの再開を望む声が大きかったこともあり、体育祭を再開することにし、生徒に対してグラウンドに出るよう指示をしました。

その後、ブロック対抗リレーが行われた。

出場した生徒のほとんどは裸足でした。

その後、応援合戦が行われました。

応援合戦は赤、青、黄、白のブロックごとに行われることが予定されており、まず、赤ブロックの生徒から演技を開始しました。

開始後間もなく、雨足が強くなり、遠雷も聞こえるようになりました。

青ブロックの原告は、階段状の応援席の最下部の座席に座っており、裸足の状態で地面に足を着けていました。

赤ブロックの演技の途中である午後2時38分ころ、A高校の付近において本件落雷があり、原告は衝撃を感じその場で足から崩れるように倒れました。

そこで、A高校職員は、担架で原告を保健室に搬送し、午後2時50分ころに救急車を要請しました。

裁判所の判断

まず、原告は、

「体育コース集団演技(女)の開始時から雨は土砂降りであり、また、終了直後には雷鳴が聞こえたことが認められることから、A高校教員において、その時点で本件体育祭を中止すべき義務があった」

と主張しました。

しかしながら、裁判所は

「A高校教員は、その時点で、本件体育祭を一時中断することにし、生徒に対して、体育館に避難するよう指示をしたことが認められ、体育館に避難させていれば生徒が落雷に感電するのを防止することはできるから、同教員が、生徒を安全な場所である体育館に避難させた上で天候の様子を見るために本件体育祭を一時中断するにとどめ、本件体育祭を中止しなかったことに、特に不相当な点はないというべきであり、同教員に原告主張のような中止義務があったということはできない。」

と判断しました。

次に、A高校教員が本件体育祭を再開した時点での過失の有無が問題となりました。

この点について、裁判所は

  • 中断後30分程度経過した午後2時7分ころまでに、雨は土砂降りの状態から徐々に小降りになり、雷鳴も聞こえなくなったものの、降雨時の天候は不安定であり、そのまま回復していくとは限らないし、落雷は、雨が降り出す前や小止みのときにも生じ得るものであること、
  • A高校の所在地を含む筑豊地方では、前日の午後4時47分から雷注意報が発令されていたこと、
  • 落雷については、直接の電撃の他に、落雷による電撃が濡れていた地面を走り、電撃を受けることも十分にあり得ること

等の事情に照らし

「A高校教員は、少なくとも、本件体育祭を再開するに当たっては、落雷事故発生の危険性を予見して、これを防止するために、ほとんど裸足の状態であった生徒に対し、靴を履くよう指示すべき義務があったというべきである。」

とした上で

「A高校教員が、本件体育祭を再開するに際し、生徒に対し、靴を履くよう指示したことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、再開後の最初の競技であるブロック対抗リレーに出場した生徒のほとんどは裸足であったこと等に照らせば、同教員は、生徒に対し、少なくとも、靴を履くよう指示してはいなかったものと認められる。」

として、

「A高校教員には、靴を履くよう指示しなかったことにおいて、過失があったというべきである。」

と判断しました。

そして、裁判所は、

「被告は、被告の公務員であるA高校教員が、教育活動の一環としてなされた本件体育祭における過失によって原告に生じさせた後記損害を賠償すべき義務がある。」

と、被告の損害賠償責任を認めました。

落雷の危険性に対する注意義務

本件では、体育祭の途中で雨が土砂降りとなり、雷鳴が聞こえているような状況でした。

また、雷注意報も発令されている状況でした。

そのことを考えると、体育祭を一時中断したこと自体は賢明な判断であったと思われますが、30分程度の中断で体育祭を再開したことについては疑問です。

高校3年生にとっては最後の体育祭ですし、保護者としてもせっかく観戦に来たのに中止だというのは困るという意見もあったことでしょう。

しかし、それよりも大事なのは、生徒の安全のはずです。

最近ではゲリラ豪雨が頻繁に発生していますし、その際に雷鳴がとどろくことは何も異例なことではありません。

むしろ、ゲリラ豪雨と同時に落雷の映像が一緒にニュースで流されることも少なくありません。

このことを考えると、ゲリラ豪雨の際には落雷の危険性も高いのであって、小雨になったからといって落雷の危険性がなくなったと考えるのは早計に過ぎます。

落雷事故による身体に対する影響は大きいことを考えると、落雷の危険性については十分に配慮する必要があると思います。

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