事実婚(内縁関係)のメリットとデメリット

2018.10.05 弁護士コラム

夫婦のトラブルに関する相談を受ける際に、いわゆる事実婚の方からの相談を受けることが増えてきました。

その背景には、女性が社会で活躍していることがあると考えられます。

そこで、今回は事実婚のメリット・デメリットとともに、事実婚の解消と離婚の異同について説明してみたいと思います。

事実婚(内縁)とは何か

事実婚とは、婚姻届は出していないものの、実質的には夫婦同様の関係にある男女間の状態のことをいいます。

世間ではよく「内縁の夫」や「内縁関係にある」などといわれますが、この「内縁」というのが事実婚にあたります。

事実婚に対して、婚姻届を提出して結婚することを法律婚といいます。

事実婚と法律婚の違いは、「婚姻届を提出しているか否か」です。

当事者としては、婚姻届を提出していないということはもちろん認識しているでしょうが、それ以外には法律婚の夫婦と同様の生活を送っていますので、第三者から見ると、夫婦として生活しているのが法律婚であるのか事実婚であるのかはぱっと見ではわかりません。

事実婚と同棲の違いは何か

事実婚については婚姻届を提出していない男女が一緒に生活しているわけですから、見た目は同棲生活を送っているカップルと何ら異なる点はありません。

では、どこに違いがあるのでしょうか。

一般的には、事実婚といえるための条件としては、①当事者間の夫婦関係を成立させようとする合意と②夫婦共同生活の存在であると言われています。

この点、単なる同棲生活を送っているカップルの場合には、②の夫婦共同生活の存在については、例えば家計を一緒にしていてお互いがお金を出し合ったり、一方が他方の収入や支出を管理したりしているケースもあるでしょうから、事実婚と大差はない場合もあると考えられます。

しかし、①の当事者間の夫婦関係を成立させようとする合意という点については、同棲中のカップルには夫婦関係を成立させようという合意までは成立していないものと考えられます。

ただ、第三者から見て「あの2人は同棲中である」と思っていたとしても、当事者が「夫婦関係を成立させようとする合意が成立している」と思っていれば、事実婚が成立しているということになります。

事実婚のメリット

では、事実婚にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

姓を変更する必要がない

最高裁は、平成27年12月16日、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断しました。

法律上も、法律婚の場合には同一の戸籍に入ることになりますので、夫婦のどちらかが姓を変えなければなりません。

これに対して、事実婚の場合には同一の戸籍に入ることはありませんので、夫婦のどちらも姓を変える必要がないということになります。

ちなみに、法律婚の場合でも、旧姓をいわゆる「通称」として使って仕事をしている場合もありますが、職業によっては許されない場合があります。

事実婚を解消しても戸籍には記載されない

法律婚の夫婦が離婚する場合には離婚届を提出することになります。

そのため、いつ離婚したか、本籍地はどこに移ったのか(これを転籍といいます)などが戸籍に記載されることになります。

これに対して、事実婚の場合には、関係を解消しても離婚届を提出するということがありませんので、戸籍には何も記載されません。

事実婚解消の時に親権者をどちらにするかという問題が生じない

法律婚の夫婦の間に生まれた子供がいる場合には、夫婦が離婚する場合にはいずれが親権者になるのかを決めなければなりません。

しかし、親権争いは時に深刻な問題となってしまい、調停や裁判などでも争われてしまうことになります。

また、離婚後にも親権者の変更などをめぐって争いになることもあります。

これに対して、事実婚の場合には事情が異なります。

事実婚の夫婦の間に生まれた子供は、法律上の婚姻関係にない男女間の子供ということになりますので、「非嫡出子」といいます。

この非嫡出子については、自動的に母親の戸籍に入ることになります。

その結果、母親の姓を名乗ることになります。

父親との間で親子関係を発生させるためには、認知が必要になります。

しかし、認知したからといって父親が必ず親権者になれるわけではなく、父母の協議で父を親権者と定めない限り親権者になることはできません。

したがって、事実婚の場合には通常は母親のみが親権者となっていますので、事実婚解消の場合に親権争いは発生しないということになります。

事実婚のデメリット

では、事実婚にはどのようなデメリットがあるのでしょうか?

相続権がない

事実婚の夫婦は、互いに法定相続人とはなりません。

そのため、一方が死亡した場合でも、他方は相続できないことになります。

もっとも、この点については遺言を残しておくことで解消することはできます。

ただし、他に法定相続人がいる場合には、遺産分割協議や遺留分減殺請求などの問題が生じることになります。

父親と子どもの姓が異なる

事実婚の夫婦から生まれた子供は、非嫡出子として扱われ、自動的に母親の戸籍に入り、母親の姓を名乗ることになります。

父親は認知をすることにより法律上の父子関係を成立させることはできますが、親権者はあくまでも母親です。

したがって、父親と子供との姓は異なるということになります。

子供が幼い場合には問題はないかもしれませんが、子供が成長するにつれて「なぜ父親だけ姓が違うのか」という疑問を抱くようになるでしょう。

また、世間からも父親だけが姓が違うということに違和感を持たれることもあるでしょう。

税制面でのデメリットもある

所得税については、法律婚の夫婦については配偶者控除や配偶者特別控除などの制度がありますが、事実婚の夫婦については配偶者控除や配偶者特別控除は受けられません。

また、相続税についても、法律婚の場合には1億6000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い方の控除を受けることができますが、事実婚の場合には、仮に遺言で相続することができたとしてもこのような控除を受けることはできません。

別れる際には法律婚と事実婚で違いがある。

養育費

養育費は子どもを育てるのにかかる費用を両親が分担するというものです。

したがって、事実婚であっても親である以上は養育費を負担すべきということになります。

ただ、父親が子供を認知していない場合には、法律上の父子関係が成立していません。

そのため、父親が子供を扶養しなければならない法律上の義務が存在しないため、養育費を支払うべき法律上の義務がないことになります。

事実婚を解消するにあたり父親から子供の養育費をもらいたいという場合には、まず認知してもらう必要があります。

財産分与

事実婚であっても、夫婦で協力して作った財産を作るという点では法律婚と何ら異なるところはないため、財産分与を請求することは可能です。

ただし、法律婚の場合には、その始期が「婚姻届を提出したとき」と明確であるのに対し、事実婚の場合には必ずしも明確ではありません。

財産分与はあくまでも婚姻関係にある状態で作った財産を分けるものであり、婚姻関係になる前から有していた財産は特有財産として財産分与の対象とはなりません。

事実婚の場合には、その始期が明確ではないため、特有財産と財産分与の対象財産との区別がつきにくいことから、協議が難航することが予想されます。

慰謝料

法律婚の夫婦が離婚する場合、一方当事者に夫婦関係を破綻させた責任がある場合には、他方が慰謝料を請求することができます。

この慰謝料については、事実婚の解消の場合にも同様に考えることになります。

事実婚と法律婚の違いは、「婚姻届を提出したか否か」という形式面にすぎず、実質的にはいずれも夫婦であることに違いはありません。

したって、たとえ事実婚の解消の場合であっても、一方当事者に夫婦関係を破綻させた責任があるという場合には、他方が慰謝料を請求することができます。

年金分割

事実婚の場合にも年金分割は認められます。

ただ、事実婚の場合には、妻側が第3号保険者の期間(扶養に入っている期間)に限って分割の対象とすることとなっています。

婚姻費用

事実婚の夫婦も互いに扶養の義務を負うのは法律婚の場合と同じです。

したがって、事実婚の場合にも婚姻費用の分担を請求することは可能です。

ただ、婚姻費用を分担しなければならないとされるのは、「離婚が成立するまで」か「別居を解消するまで(つまり同居を再開するまで)」とされています。

これに対して、事実婚の場合には離婚届を提出するわけではありませんので「離婚が成立するまで」というのはありません。

また、事実婚の場合には、夫婦が別居するようになった時点で事実婚は解消されたとみることができます。

したがって、事実婚にある夫婦の間で婚姻費用の分担が問題になるとすれば、いわゆる家庭内別居のような状態などの場合に限られると思われます。

調停手続の利用

事実婚を解消するにあたり、夫婦で話し合いが成立しないという場合には、家庭裁判所における調停を利用することができます。

法律婚の夫婦が離婚についての調停を行う場合には「夫婦関係調整(離婚)調停」という言い方をするのですが、事実婚の夫婦の場合には「内縁関係調整(解消)調停」という言い方をします。

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