中学体育館内のバレーボールネット張り作業中にネット巻き器が跳ね上がり顔面に傷害を負った事例

2018.10.27 スポーツ中の事故

大分地方裁判所平成26年6月30日判決

事案の概要

原告は、A中学校体育館内のバレーボール用支柱に設置されたステンレス製ネット巻き器を使用してバレーボールネットを張る作業をしていた際、当該ネット巻き器が急激に跳ね上がって顔面を直撃し、前額部挫創、頭蓋骨開放骨折、鼻骨骨折、脳挫傷の傷害を負いました。

本件は、原告が、A中学校を設置する地方公共団体である被告に対し、公の営造物である上記支柱及びネット巻き器の設置又は管理に瑕疵があったとして、国家賠償法2条1項、同法1条1項による損害賠償を求めた事案です。

裁判所の判断

営造物責任について

裁判所は、本件支柱及び本件ネット巻き器が「公の営造物」(国賠法2条1項)に当たることについては、当事者間に争いがないことを前提に

「本件中学校は、体育館内のバレーボール用に設置した本件支柱に、バレーボールネットを張るために本件ネット巻き器を取り付けていたこと、原告は、本件支柱に取り付けられた本件ネット巻き器を使用してバレーボールネットを張る作業をしたところ、本件ネット巻き器が本件支柱を急激に跳ね上がったこと、本件ネット巻き器が急激に跳ね上がったのは、本件事故当時、2450ニュートン(250キログラム重)程度の張力が本件ネット巻き器にかかると、本件ネット巻き器が、急激に跳ね上がる状態になっていたためと十分に推認できることが認められる。

とした上で、

「中学生が、バレーボールネットを張るに際し、張力につき、通常にバレーボールネットを張るより、多少強く2450ニュートン(250キログラム重)の張力がかかる程度に、本件ネット巻き器のハンドルを回すことは十分に想定されるところであり、この程度の張力で、本件事故当時、本件ネット巻き器が、急激に跳ね上がる状態であったのであるから、本件ネット巻き器は、通常有すべき安全性を有しておらず、その設置又は管理に瑕疵があったものと認められるというべきである。」

として、被告の営造物責任を認めました。

過失相殺について

被告補助参加人(製造業者)は、

「原告が本件事故の際に本件ネット巻き器のハンドルをゆっくり慎重に回転させず、力任せに急激に回転させたのであり、過失相殺を行うべき」

と主張しましたが、裁判所は

「本件中学校は、体育館内のバレーボール用に設置した本件支柱に、バレーボールネットを張るために本件ネット巻き器を取り付けていたこと、原告は、本件支柱に取り付けられた本件ネット巻き器を使用してバレーボールネットを張る作業をしたところ、本件ネット巻き器が本件支柱を急激に跳ね上がったこと、本件ネット巻き器が急激に跳ね上がったのは、本件事故当時、2450ニュートン(250キログラム重)程度の張力が本件ネット巻き器にかかると、本件ネット巻き器が、急激に跳ね上がる状態になっていたたためと認められるが、他方、中学生の生徒が、バレーボールネットを張るに際し、張力につき、通常にバレーボールネットを張るより、多少強く2450ニュートン(250キログラム重)の張力がかかる程度に、本件ネット巻き器のハンドルを回すことがあることは十分に想定されるところであり、本件中学校等は、この想定のもとに、本件ネット巻き器等の物品の設置、管理をすべきであること、また、本件中学校は、上記の想定のもとに、本件ネット巻き器等の物品の使用方法につき生徒に対して指導すべきであるが、本件中学校が、本件ネット巻き器の使用方法につき、原告に対して、どのような指導をしたのかは証拠によっても明らかではないこと、本件ネット巻き器でバレーボールネットを張るに際し、通常、本件ネット巻き器に付属するハンドルを使用していたことをうかがわせる証拠はなく、原告が、あえて、本件ネット巻き器に付属するハンドルを使用しなかった事実はうかがえないことからすると、過失相殺をするのは不当である。」

として、被告補助参加人の主張を認めませんでした。

使用する器具の再点検を

本件で問題になった営造物責任とは、国家賠償法2条1項の

「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」

のことを指します。

ここでいう「公の営造物」とは、国または公共団体により公の目的のために用いられる人的・物的施設の全体をいいます。

本件で問題になった市立中学校体育館内のバレーボール用の支柱やネット巻き器は学校という教育現場で用いられる物的施設ですから、公の営造物に当たります。

そして、この営造物の設置または管理に瑕疵があり、それが原因で他人に損害が生じた場合には、損害賠償の対象になります。

このような学校において使用される施設や器具については、老朽化の問題だけでなく、使用中や使用後のメンテナンスが十分に行われていない可能性が高いと考えられます。

定期的な安全点検も行われていないのではないかと思われます。

それは、予算の問題もさることながら、学校関係者にはそのようなメンテナンスや安全点検を行うだけの人的・時間的な余裕がないためです。

しかし、だからといって、施設や器具の瑕疵によって生徒や部員がけがをしてもしょうがないとはいえないのは当然のことです。

事故の発生を未然に防ぐために、施設や器具の再点検を実施していただきたいと思います。

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