顧問教員は部活動に立ち会うべき義務があるのか

2018.11.11 弁護士コラム

昨今、教員が部活動の顧問を担うことが過重労働につながっているという、いわゆる「ブラック部活動」が話題になっています。

それに関連して、そもそも教員が部活動に顧問として立ち会う義務があるといえるのかが問題になります。

これが問題になるのは、顧問教員が部活動に立ち会っていない状況での練習中に事故が発生して部員等が死傷した場合、顧問教員が立ち会っていなかったことが教員の過失と認められるかどうかという場面です。

実際の事例を挙げて解説してみたいと思います。

事案の概要

X及びYは、昭和51年4月金武町立金武中学校に入学し、本件事故当時は同校の2年生として在籍していました。

昭和52年10月5日、金武中学校においては、運動会の予行演習を翌日に控え、同日午後から運動会練習の日課が実施されましたが、同日午後4時50分頃生徒は解散となりました。

その後、Xは、友人ら10名位と共に体育館に行ったところ、体育館内では、いずれも課外のクラブ活動であるバレーボール部とバスケットボール部とが両側に分かれて練習していました。

普段は、バレーボール部顧問の教諭が同部の部活動を指導、監督していましたが、当日は、顧問教諭は運動場において運動会予行演習の会場の設営、用具類の確認等をしていて体育館にはいませんでした。

また、他の教諭も体育館には居合わせていませんでした。

そのこともあってか、Xらはトランポリンを体育館内の倉庫から無断で持ち出し、これをバレーコートとバスケツトコートのほぼ中間の壁側に設置してしばらくこれで遊んでいました。

同日午後5時過ぎ頃、YがXに対し、バレーボールの練習の邪魔になるからトランポリン遊びを中止するように注意しましたが、Xがこれに反発しました。

すると、YがXを体育館内の倉庫に連れ込み、手拳でXの左顔面を2〜3回殴打し、そのためXは左眼がチラチラして涙が止まらなくなりました。

Xは、この暴行を受けてから約一週間後に左眼の視野の一部が黒くかすみ、徐々にこれが広がり、一か月近くで全く視力を失いました。

そして、Xは、昭和52年11月11日沖縄県立中部病院において外傷性網膜全剥離と診断されました。

福岡高裁那覇支部判決

この事案について、福岡高等裁判所那覇支部は、昭和56年3月27日、次のとおり判示して、上告人は、国家賠償法1条1項に基づき、本件事故によるXの損害を賠償すべき責任があるとしました。

  • 本件事故当時バレーボール部とバスケツトボール部が体育館を共同で使用し、また、右各部員以外の生徒も体育館を使用していたのであるから、体育館の使用方法あるいは使用範囲等について生徒間において対立、紛争が起ることが予測された。そのほか生徒の練習方法が危険であつたり、練習の度を過ごすことも予測された。

  • したがって、バレーボール部顧問の教諭には、体育館内においてバレーボール部が部活動をしている時間中は生徒の安全管理のため体育館内にあつて生徒を指導、監督すべき義務があり、当該教諭に支障があれば他の教諭に依頼する等して代わりの監督者を配置する義務があつたというべきところ、バレーボール部顧問の教諭はこれを尽くしていなかつたから、右の点について過失があったといわざるをえない。

  • そして、本件事故は体育館内で発生したものであるところ、バレーボール部顧問の教諭が体育館内でバレーボール部の部活動を指導、監督していれば、トランポリン遊びは当然制止され、本件事故は未然に防止できたものと推測されるから、本件事故の発生と同教諭の前記過失との間には因果関係があるというべきである。

最高裁判決

これに対して、最高裁判所は、昭和58年2月18日、次のように判断しました。

  • 前記事実関係によれば、本件事故当時、体育館内においては、いずれも課外のクラブ活動であるバレーボール部とバスケットボール部とが両側に分かれて練習していたのであるが、本件記録によれば、課外のクラブ活動は、希望する生徒による自主的活動であったことが窺われる。

  • もとより、課外のクラブ活動であっても、それが学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、顧問の教諭を始め学校側に、生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務のあることを否定することはできない。

  • しかしながら、課外のクラブ活動が本来生徒の自主性を尊重すべきものであることに鑑みれば、何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合は格別、そうでない限り、顧問の教諭としては、個々の活動に常時立会い、監視指導すべき義務までを負うものではないと解するのが相当である。

  • ところで、本件事故は、体育館の使用をめぐる生徒間の紛争に起因するものであるところ、本件事故につきバレーボール部顧問の教諭が代わりの監督者を配置せずに体育館を不在にしていたことが同教諭の過失であるとするためには、本件のトランポリンの使用をめぐる喧嘩が同教諭にとって予見可能であったことを必要とするものというべきであり、もしこれが予見可能でなかったとすれば、本件事故の過失責任を問うことはできないといわなければならない。

  • そして、右予見可能性を肯定するためには、従来からの金武中学校における課外クラブ活動中の体育館の使用方法とその範囲、トランポリンの管理等につき生徒に対して実施されていた指導の内容並びに体育館の使用方法等についての過去における生徒間の対立、紛争の有無及び生徒間において右対立、紛争の生じた場合に暴力に訴えることがないように教育、指導がされていたか杏か等を更に綜合検討して判断しなければならないものというべきである。

  • しかるに原審は、これらの点について審理を尽くすことなく、単に、前記のような説示をしたのみで同教諭の過失を肯定しているのであつて、原審の右判断は、国家賠償法1条1項の解釈適用を誤り、ひいて審理不尽、理由不備の違法を犯したものというべきであり、その違法が原判決に影響を及ぼすことは明らかである。

顧問教員に立ち会い義務がないと断言できるか

この最高裁判決自体は有名だと思います。

そして、教員の中には「教員には部活動の顧問として立ち会う義務はない」というお墨付きを得ていると考えている方も多いことでしょう。

しかし、このような単純な解釈は間違いです。

最高裁は、教員が顧問として立ち会う義務が「一切ない」とは判断していません。

「何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合」には、例外的に立ち会い義務があると判断しています。

したがって、顧問教員が立ち会っていない状況での部活動中に事故が発生した場合、その事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であったと認められる場合には、顧問教員には立ち会い義務があったということになり、かつ、立ち会っていなかった以上は立ち会い義務に違反していることになりますから、顧問教員には過失があったものと判断されることになります。

したがって、顧問教員の部活動への立ち会い義務の有無は事案ごとに個別具体的な事情を踏まえて総合的に判断されることになります。

ただ、私としては、このような立ち会い義務を教員の過失や学校(自治体)の損害賠償責任などといった法律問題と捉え、これを学校側の視点に立って考えるのではなく、生徒(部員)の安全や事故の防止という生徒側の視点に立って考えるべきだと思います。

Contact

お問合わせ

お電話でのお問い合わせはこちら

092-409-9367

受付 9:30~18:00 (月〜金)
定休日 土日祝

フォームでのお問い合わせはこちら

Contact Us

Top